春の珍事か、それとも覚醒か——。2月23日、沖縄セルラースタジアム那覇で行われた東北楽天とのオープン戦で、巨人が“小林誠司のバット”により快勝した。
小林といえば、“打てない”イメージが広まっている。強肩堅守の好捕手ではあるが、その打撃面での信用のなさで、スタメンマスクは昨季、68試合まで減ってしまった。その小林がバットでアピールしたとなれば、巨人ファンもビックリだろう。
「小林は巨人入り前、社会人野球の最後のシーズンとなる13年に、『社会人ベストナイン』に選出されました。その理由は、同年の通算打率が3割8分以上あったからです」(在京球団スカウト)
と、もともと打撃面での素質はあったわけだが、プロ入り後、昨季までの6年間で平均打率2割1分9厘と、完全に眠ったままの状態が続いている。
「そんな中、楽天戦での適時打は、意地のひと振りとも言えるでしょう。この日の先発は菅野智之。エースがなげる日もマスクをかぶることができるかどうか、それが巨人の正捕手を意味しますからね」(球界関係者)
昨季、小林は正捕手の座から転落の危機にあった。菅野が先発した22試合で“ダメ出し”をされ、首脳陣が炭谷や大城にマスクをかぶらせた。菅野も成績不振に陥ったが、「小林にも一因がある」という厳しい評価が下されている。そこに加えての打撃難である。小林にすれば、エースが登板する試合ぐらいはバットでアピールしておきたかったことだろう。
「ただ、阿部慎之助が現役を引退した今年、以前は断っていた育成の広畑塁捕手を自主トレに帯同させるなど、小林も正捕手の自覚を強く持つようになりました。そうした意識の高まりが、徐々に本人の打撃にも出始めているのかもしれませんね」(前出・球界関係者)
小林の奮闘は頼もしい限りだが、一方でこんな声も聞かれる。
「17年第4回WBC大会で、侍ジャパンの打率トップは筒香や内川、坂本、松田を抑え小林だったんです。しかし、同年シーズンの打率成績は2割6厘。前年も2割4厘で、2年連続でリーグワースト打率となってしまった。WBCが開催されたのが春先ということを考えると、単に今の時期だけ調子が上がっているだけなのかもしれません」(ベテラン記者)
もう少し様子を見る必要がありそうだ。
(スポーツライター・飯山満)