イチゴの出荷が最盛期を迎え、スーパーのフルーツ売り場には真っ赤に色づいた旬の味覚が競うように並んでいる。が、その甘い味覚に誘惑されたのは買い物主婦だけではなかった。1粒1000円もの高級ブランドイチゴを餌に、投資を募る闇商法がてぐすね引いて待ち構えていたのだ。なんと、あの往年の大物艶女優もターゲットにされ─。
〈この度は大変なる御迷惑を致し、すなわちレンタル料金と栽培ベッド購入代金返還が滞る事になり、ついにお約束が実効できない事態に陥ってしまい心より深く深くお詫び申し上げる次第でございます〉(原文ママ)
1月末、〈お詫びと現状の報告〉と題された1枚の封書が投資者宛に送付された。送り主は「軽井沢四季彩ファーム」の代表者となっている。
「この会社は、高級イチゴの栽培棚の所有権を小口販売する『栽培棚レンタルオーナー』なる商品を販売し、2018年までに約32億円を集めている。売上金4億円とうたいながらも、実際には18年の売り上げは400万円程度しかなく、昨年1月には、経営者6人が特定商品取引法違反の容疑で逮捕されている。その後、1人が罰金刑となっています」(社会部キャップ)
出資したのは全国27都道府県に在住する高齢者を中心とした約840人。逮捕から1年後、あらためて出資者のもとに送られた詫び状には〈役員の報酬を全額カット及び私財提供〉〈著しい風評被害を被り、取引金融機関はロック〉〈台風19号の水害被害〉などが重なり、〈刃折れ矢尽きて破産の受容すらままならない現状〉などと、再起が不可能である理由を縷々挙げ連ねているのだ。
「この高級イチゴの名前は『軽井沢貴婦人』。桃薫という品種のとおり桃の香りがする薄ピンク色の大粒のもので、これまでのイチゴとはまったく違う風味を特徴としています。価格は1粒1000~1500円で、東京・大阪などの有名デパートなどに出荷されていたとされています」(社会部キャップ)
そして、この貴婦人のプロデュース役を果たしたのが、女優の東てる美(63)だったというのである。
スポーツ紙芸能デスクが引き継ぐ。
「東は昔から女優業のかたわら、マンガの古本屋や自然派化粧品の販売、高級ペットフードの輸入販売など、さまざまなサイドビジネスに携わっていることで知られています。このブランドイチゴも副業の一つで、実際にテレビのバラエティー番組などに出演して宣伝していたこともあります」
はたして、1粒1000円超えもするイチゴの甘味とは? ホームページを見ると、いまだに通販を続けている様子だが‥‥。
その実態を追い、長野県・軽井沢町を訪ねると、冠雪した浅間山のふもとに「四季彩農園」の栽培ハウスが建っていた。しかし、出荷シーズン真っ盛りにもかかわらず、ハウスには人の気配すらない。周囲の様子をうかがうと、近所の農業関係者がこう証言してくれた。
「東京や大阪などの大きなデパートで木箱に入れて売ってたらしいね。なんでも芸能人が宣伝して人気になったという話だった。一度出荷できないハネモノを食べたことがあるけど、1個1000円じゃ、こっちじゃ売れないよ。東さん? こっちに来ていたという噂は聞いたけど、実際に見たことはなかったね」
ごく最近まで、ハウスで農作業する人影を見かけたそうだが、全ては雲散霧消してしまったのか─。