ハロウィーンで沸く10月に封切られ、主演のホアキン・フェニックスによる圧巻の怪演が大きな話題となったのは「ジョーカー」。グロテスクな描写がゆえに年齢制限が設けられたが、世界興行収入は10億ドル(約1080億円)を超え、日本でも50億円という異例の大ヒットを記録。人気アメコミシリーズの「バットマン」に登場する悪役の前日譚を描くマニアックなストーリーながら、ショッキングなストーリー展開がSNSでの口コミによって多方面に伝播し、芸能界からも絶賛の声が上がっていた。
「SNSで評判になった『ジョーカー』もそうですが、日本映画界でも2月公開の『翔んで埼玉』は口コミを中心に徐々にその評価を高め、ロングラン上映されると、最終的な興収は37億円に達しました。近年の映画界における潮流ともいうべき、ロケ地や主要な舞台を作品のカラーとして打ち出す“ご当地映画“のお手本であり、こうした戦略は地元周辺の集客だけでなく、イベントやグッズの販売、ロケ地を巡る聖地巡礼にも繋がるため、同作のヒットは今後のビジネスモデルになり得る意義深いものがありました。もちろん二階堂ふみやGACKT、伊勢谷友介といった豪華なキャストが人気につながったことは確かですが、タイトルも含め、斜め上な視点から描かれた斬新な構成にも高い評価が集まりました」(エンタメ誌ライター)
春、夏、秋と隙間なく大ヒット作に恵まれた2019年の映画界だが、フィナーレを飾る冬シーズンもまた豪華絢爛だ。
11月下旬には、前作が社会現象を巻き起こすほどのメガヒットを記録した「アナと雪の女王2」が公開され、3日間で19億円というディズニーアニメーション史上No.1のオープニング記録を打ち立てると、封切りからわずか10日間で40億円を突破。今年夏に「トイ・ストーリー4」が達成していた最速記録を抜き去り、ディズニーにとっては記録ずくめの特大ヒットとなった。
「最後を締めるのは、世界中に多くのファンを持つスター・ウォーズ・シリーズの最終章『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』です。1978年のジョージ・ルーカス監督による『スター・ウォーズ 新たなる希望』に始まり、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』と続く全8作品の累計世界興収が75億ドルを超えるドル箱シリーズも、いよいよ最終作となりました。新3部作の第1弾『フォースの覚醒』が20億ドルの興収を上げたのに対し、第2弾『最後のジェダイ』が13億ドルに落ち込んだ点は少なくない不安材料ではありますが、『スカイウォーカーの夜明け』は人気シリーズのラストを飾る話題作ということもあり、2020年正月以降にもヒットが持続する見込みとなっています」(同前)
映画ファンを飽きさせない名作が次から次へと銀幕を飾った2019年。日本映画界にとっても歴史に残る年となった。さて、あなたのハートに最も刺さったのは、どの作品だろうか。
(木村慎吾)