侍ジャパンの稲葉篤紀監督が、今回のプレミア12大会で「彼がしっかり投げてくれれば…」と、キーマンに上げていた投手が分かった。アンダースローの高橋礼(ソフトバンク)、左腕の今永昇太(横浜ベイスターズ)でもなく、ルーキーの甲斐野央(ソフトバンク)である。
「メキシコ戦(13日)でも7回の重要な場面を任されています。クローザーの横浜・山崎康晃も好投が続いているので目立ちませんが」(球界関係者)
稲葉監督が参考にしている試合は、前回WBC大会の継投策だ。先発か球数制限で降板した後に出てくる2番手ピッチャーに着目しており、平野佳寿(現ダイヤモンドバックス)のような「強いボール」「ストレート勝負」のできるセットアッパーを探していた。
「早くから甲斐野のストレートに注目していましたが、新人なので、大半のスタッフは『様子を見ましょう』と代表招集に否定的でした」(同前)
しかし、侍のエースとして予定していた巨人・菅野が不振のため、稲葉監督の提案に従った。ソフトバンク・千賀の代表辞退も痛かったが、「ストレート勝負」のできる投手が立て続けにいなくなり、新人の甲斐野を要所で使うことになった。
「強いボールを投げられる投手がセットアッパーで出てくると、試合の中盤以降に流れを引き寄せられるというのが稲葉監督の主張です」(同前)
甲斐野は宿敵・韓国戦(16日)の切り札でもある。また、ベテランの巨人・大竹寛を招集した理由だが、こちらも韓国戦を意識してのことだった。大竹はセットアッパーとして復活したが、ストレートにはもう往年のスピードとパワーはない。しかし、シュートがある。韓国のバッターは強気で踏み込んで打ちに来るタイプが多いため、「右バッター対策」として、シュートの大竹に期待しているという。
今大会に限った話ではないが、日本のバッターは外国人投手特有の「動くストレート」に苦しんでいる。甲斐野に着目した稲葉監督の発想もそうだが、ひょっとしたら、ストレートはどんな変化球にも勝る“魔球”なのかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)