2023年7月の道路交通法改正により、規制が大幅に緩和された「電動キックボード」。それに伴い、違反や衝突などの関連事故が激増している。
6月17日の参議院内閣委員会で、立憲民主党の石垣のり子氏の質問に対して警察庁が示したデータによれば、2024年中の電動キックボード関連の交通違反の検挙件数は4万1246件。事故件数は2024年中で338件あり、台数に対する事故率が自転車の約15倍にあたることが明らかになった。モータージャーナリストが語る。
「海外での電動キックボード普及を機に、国内電動キックボード事業者5社により『マイクロモビリティ推進協議会』が設立されたのが2019年5月のこと。経済産業省、内閣府のバックアップもあり、2020年7月には政府成長戦略の1つになったことで、規制緩和が実現しました。2024年2月には参加企業も12社となり、結果、街のあちこちにシェアサービスが登場。現在の普及拡大に繋がったのです」
確かに、電動キックボードはその手軽さ、利便性の高さを考えると、便利な乗り物と言えるだろう。ただ、公道を走るにもかかわらず、16歳以上であれば免許がいらない。しかもヘルメット着用も「努力義務」など、法的な強制力が効かないのが現状だ。
「規制緩和以前の電動キックボードは、全て『原動機付自転車(原付)扱い』だったため、法的にも厳しい規制があり、原付である以上、走行するのは車道に限られていました。ところが、改正後は走行可能なエリアが大幅に拡大し、時速6キロに速度制限を切り替えれば歩道を通行することも可能になった。事故が急増したのはその結果とも言えるでしょう」(前出・ジャーナリスト)
4万件以上の交通違反の中には、酒気帯び運転をはじめ、信号無視や2人乗り、車道逆走、自動車専用道路への侵入、さらには歩道を時速20キロモードのまま走ったり、中にはデッキ部分にスーツケースを乗せ、その上に座って運転するなどの事案が報告されている。
電動キックボードの危険運転や事故は海外でも社会問題になっており、ドイツでは自動車並みに厳しく規制されている。フランスでも2023年4月から年齢制限の引き上げや、罰金の増額といった規制が強化された。シェアリングサービスが多いパリでは、事故の増加などをうけ、住民投票でレンタルサービスの継続が打ち切られることが決まり、2023年9月からレンタル禁止令が施行されたほどだ。
一方の日本は、上記のように政府が先導してサービスを拡大させてきた。違反や事故が急増していることに目を向ければ、規制緩和による弊害は明らかのようにも見えるが…。
(灯倫太郎)