事故多発必至でもゴリ押し?「電動キックボード」16歳以上免許不要のナゼ!

 この手のひら返したような、方針転換の背景にはいったい何があるのか?

 ひき逃げ事件で逮捕者が出るなど、つい最近までルール違反の横行が問題視されてきた電動キックボード。ところが12月23日、警察庁が来年の通常国会に、電動キックボードを「16歳以上であれば運転免許不要」とする道路交通法改正案を提出する方針を固めたことが明らかになった。

「警察庁は、これまで電動キックボードを『原付バイク』と位置づけてきましたが、今回の法案では、車体の大きさが自転車と同程度で、最高速度が時速20キロ以下のものについては、16歳以上であれば運転免許は不要。さらに、これまで同様、ナンバープレートとサイドミラーは必要なものの、ヘルメット着用は任意としています。正直、降ってわいたような突然の方針転換ですからね。現場の警察官たちにも戸惑いの声があるようです」(社会部記者)

 また、これまで電動キックボードは原則、車道走行が義務付けられきたが、改正案では、時速6キロまでに制限して、それが分かるよう表示できる機能があれば、歩道を走ることも可能になるという。

「今年6月と11月には大阪ミナミの歩道でひき逃げ事故が発生。1人が重傷を負い、東京でも信号無視で人身事故を起こしたとして、20代の女性が自動車運転処罰法違反などの疑いで書類送検されました。ほかにも都内だけで人身・物損事故が60件以上起きていることを考えれば、本来は規制を強化するべき。それを逆に自転車並みに緩めるというわけですから、事故が増えることは火を見るより明らか。それがわかっていながら、方針転換に踏み切ろうというのですから、来年早々この議題をめぐり与野党間で論争が激化することは間違いないでしょうね」(同)

 報道に対し、ネット上では《これで人身事故、死亡事故が増えたら誰が責任取ってくれるんだ?》《信号無視平気でするんだから強化しないとダメだ。緩和したら無法地帯に変わるぞ》《無免許でOKと云う事は道交法も知らずに公道を走る輩もいるでしょう。それで他の車やバイクと共存出来ると思う?》《時速20キロ、ヘルメット無しのヤツが車道走ってるとか考えたら車乗る側からしたらチャリより怖いよ》《誰が歩道での速度計測してくれんの?歩道での歩行者の追い越し、すれ違いで絶対に事故と轢き逃げが多発するね》《車ですら飲酒運転が未だに無くならないのに、これじゃあますます事故多くなる。事が起きてからでは遅いんだよ。わかってるよね、法案を通そうとされている方々》などの反対意見が続出。

 前出の社会部記者が語る。

「脱炭素問題もあり、世界でも電動キックボードの普及が進み、一説にはその市場規模は5兆円を超えると言われています。ただ、同様に事故件数が増えていることも事実。日本では新事業特例制度に基づいて経済産業省が昨年から特定エリアを設け、電動キックボードの公道走行を目指して実証実験を行ってきましたが、欧米に比べ日本の道路は狭く入り組んでおり、地方では自転車専用道路の整備もまだまだ不十分です。そんな中で、業界団体の要望だけに応える形で法案を通してしまったら、どうなるのか。キックボードとはいえ、乗り方によっては凶器になる。それを忘れてはなりません」

 自転車による事故が多発する中、これ以上街なかが無法地帯にならぬよう、慎重な議論が望まれるばかりだ。

(灯倫太郎)

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