婚活や恋人を求める手段が多様化する中、自治体主導のマッチングサービスに注目が集まっている。とりわけ、東京都が導入した「TOKYO縁結び」は、AIによる価値観診断をもとに、相性の良い相手を自動で紹介する公的なマッチングサービスとして、2024年9月に本格稼働した。民間のマッチングアプリと差別化を図りつつ、「結婚支援」を行政の役割の1つと位置づけているのが特徴だった。
今年5月20日時点での登録者数は延べ約2万2000人に達し、「成婚(結婚の意思を確認して退会)」に至ったカップルは32組、「真剣交際中」とされるカップルは124組と報告されている。小池百合子都知事も5月30日の定例会見で、「一歩踏み出すお手伝いができたことをうれしく思っている」とコメントした。
「TOKYO縁結び」では、独身証明書や源泉徴収票の提出、オンライン面談による本人確認を必須とし、安全性と信頼性の確保を徹底している。加えて、AIによるマッチングだけでなく、専門スタッフによる個別相談や、出会いを促進する交流イベントの実施など、人的な支援も組み込まれている。つまり、決してAI主導ではなく、アナログな支援も併用した「ハイブリッド型」の公的マッチングサービスとして設計されているのだ。
一方、埼玉県が運営する「恋たま(SAITAMA出会いサポートセンター)」は、より長期にわたる運用実績を持ち、2025年2月時点で累計562組(1124人)の成婚を達成した。さらに、4年連続で年間100組以上の成婚を記録するなど、継続的な成果を挙げている。「恋たま」も独身証明書の提出や本人確認を徹底し、AIによるマッチングと人的支援も併用する、伴走型モデルとなっている。
他の自治体でも結婚支援は広がっている。熊本市の「Kumarry」も、AIマッチングとボランティアによる対面支援を組み合わせたハイブリッド型だ。愛知県の「あいマリ」は、AIによるお相手紹介に加えて、オンライン相談や婚活イベントも展開する多層型の支援を実施している。長崎県でも、AI相性診断とカウンセラーによるフォローアップを併用する体制を導入している。
このように、現在の自治体による婚活支援はハイブリッド型モデルが主流となっているようだ。効率性と安全性を両立しながら、出会いから交際、結婚までの道筋をどのように支援できるか。その設計の精度と柔軟性こそが、今後の公的マッチングサービスの質を左右するカギとなっていくだろう。
(ケン高田)