「もうさ、財務省の人呼べよ、ここに」
タレントの大竹まことがこう訴えたのは1月19日放送のテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」。国の税収が5年連続で過去最高を更新しているにもかかわらず、1万以上の中小企業が倒産。「年収の壁」の引き上げも消費税減税もできない現状に業を煮やしての発言だったのだが、放送から約2カ月、同番組のスタジオで「財務省」vs「コメンテーター」が実現する運びとなった。
3月16日放送回に出演したのは元財務官僚で主税局総務課長などを務めた森信茂樹氏。「年収の壁」「ガソリン暫定税率」について議論が繰り広げられたのだが、番組終盤、森信氏が「減税効果」について説明をしたくだりで、SNSでは《ウソでしょ?》《ホントかよ?》などと大荒れとなった。
森信氏は「失われた30年」について、「財務省が緊縮財政をやってきたということになってるんですね」と前置きして、「事実はカンフル剤を打ってきた」と主張。「カンフル剤を打ち過ぎたために、経済で自立して賃上げをしようとか、設備投資をしようとか、アントレプレナーシップ(起業家精神)が育たなくて、かえって日本経済が縮こまってきたっていうのが私の感じでね」と持論を展開。責任を民間に押し付けるかのような発言に、ノンフィクションライターの石戸諭氏が反論するも、森信氏は「財務省は緊縮財政をやってないというのは事実なんです」と述べてこう続けた。
「減税したら、減税以上に増収になるというのはどの世界中にも起きたことないですよ。もし起きるんだったらみんな減税しますよ。政策として。レーガン(大統領)の時に大幅な減税したんですよ。レーガン1期。ちょうど私アメリカにいましたけど。その時に起きたことは、税法を刷ってるうちから赤字になったと言われているくらいね、大赤字になっていって」
さらに森信氏は、財政難と高金利が1985年の「プラザ合意」につながったと説明し、「減税したら減税分以上に税金が入ってくるということはね、どの経済学を見てもあり得ない」と繰り返したが…。ネット上では《減税して増収した例はいくらでもあるぞ》《法人税率下げても増収してるじゃないか》《名古屋市は減税して増収になったんじゃ…》などとツッコミが殺到していた。
「ここ最近、財務省解体デモが頻繁に行われるなど、財務省への風当たりは強まるばかり。森信氏はOBとして火消しにやってきたようですが、理路整然とした語り口で、おそらくこれまで多くの政治家をうまく説得してきたのでしょう。驚いたのは『減税して増収した国はない』と断言したこと。スタジオでは誰も反論できなかったようですが、2018年に消費税を廃止したマレーシアでは、法人税収が過去最高額になったという報告もありますし、減税して数年後に結果的に増収になった事例はあるとは思うのですが…。『減税』が『好景気』と『税収増』をもたらすという主張を否定したことで、多くの視聴者が絶望感を抱いたかもしれません」(メディア誌ライター)
とはいえ、説明のわかりやすさは折り紙つき。財務省OBとして、そして火消し役として、今後は多くの番組に呼ばれるかもしれない。