堀ちえみが乗り越えた舌がんとは?知られざる口腔がんのリスクと予防法

 2019年に「ステージ4」の舌がんと診断され、手術を経て闘病生活を送っていた堀ちえみが、昨年10月、17年ぶりのシングル「FUWARI」をリリースし話題になった。堀は舌がんの摘出手術を受け6割を切除したことで、舌を動かすことができず発音もままならない時期もあった。しかし懸命なリハビリが功を奏し、昨年3月には医師からがんが完治したと告げられ、シングル発売の運びとなったのだという。

 舌がんをはじめ、口の中にできるがんを総称して口腔がんと言うが、「がんは早期発見」が一般的な認識になる中、口腔がんは本来、臓器系のがんに比べ口の中にできるため、早期発見が容易と思われがちだ。ところが、このがんの厄介なところは、初期段階ではほとんど自覚症状がなく、口内炎のようにしか見えないため、そのまま放置し症状が現れて医師を訪ねたら実はがんだった、といったケースが圧倒的に多い。

 口腔がんには、その半数を占める舌がんのほか、歯ぐきにできる歯肉がんや、下あごの歯ぐきと舌に囲まれた部分にできる口腔底がん、また上あごにできる硬口蓋がんなどがある。また女性より男性に多いという特徴があり、早期発見・早期治療が難しいことで、世界的にその数が急増しているとされる。

 口内炎になると、舌や口の中の粘膜の色が白く変化したり、赤みが強くなる、ただれる、しこりを感じるなどの症状が現れる。だが、舌がんの症状もほぼ同様。歯肉がんも、歯ぐきの腫れや出血、口臭や歯のぐらつきといった歯周病と同じ症状なため、錯覚しやすい。ただ、がんが首のリンパ節に転移すると首のリンパ節が腫れ、痛みが出たり、舌の動きが悪くなったりする。そのため、口内炎が2週間経っても治らないような場合は、早急にかかりつけの歯科医院や専門医院を受診することだ。単なる口内炎だから時間がたてば治るだろう、などと悠長に構えていたら取り返しのつかないことになることが往々にしてあるため、要注意が必要だ。

 また、治療していない虫歯を放置していたり、歯磨きで磨き残しがあると、どうしても口内の粘膜が傷つきやすくなる。結果、それが口腔がんを誘発する環境を作り出してしまうため、口に違和感がある、口臭が強くなった、歯石が増えかたな、と感じたら、まずは予防の意味も含めて歯医者を受診することをお勧めしたい。

 3月に入り卒業や、会社の配置転換等々で、環境の変化により免疫力が下がりやすくなる季節でもある。だからこそ、より日頃の口腔ケアが大事になってくるのである。

(健康ライター・浅野祐一)

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