トランプ米大統領のもと、政府効率化省のトップを任された実業家のイーロン・マスク氏。世界シェア2位の電気自動車メーカー、テスラ社の最高経営責任者(CEO)としても有名だが、ドイツのベルリンにある同社の拠点工場「ギガファクトリー」には、列車版テスラとも言える電池式列車が工場に乗り入れている。「東洋経済オンライン」が1月25日配信の記事で詳しく紹介しているが、それで知った人もいるだろう。
「ギガトレイン」と呼ばれ、ドイツのベルリンの東端にある都市近郊鉄道Sバーンのエルクナー駅と工場を結ぶ約6キロの区間で23年9月から運行開始。約1万2000人の従業員の多くが通勤の足として利用している。
以前はシャトルバスが運行されていたが、ベルリンはロンドン、ローマと並び、欧州では特に渋滞がひどい都市。朝夕の時間帯は渋滞に巻き込まれることが多く、しかも渋滞のさらなる悪化の要因ともなっていた。
だが、1編成あたり400人の乗車が可能なギガトレインを導入したことで地域の渋滞は緩和。従業員の通勤時間は短縮され、温室効果ガスを排出しない次世代の鉄道として環境にシンセンティブな欧州でも高く評価されている。そこで気になるのが、テスラ社の鉄道業界への本格参入。マスク氏が密閉したチューブ内に列車を走られる「ハイパーループ」構想を持っていることは以前から報じられているが…。
「ただ、ギガトレインはドイツのシーメンス社製なんです。自動車と鉄道は似て非なるものなのでノウハウも異なる。自社で製造できるかは分かりませんが、車両メーカーの買収や技術提携など方法はいくらでもあります」(経済誌記者)
それに、部分的にはすでに鉄道業界に参入しているとか。
「日本でも近鉄の東花園変電所では、19年からテスラ社の蓄電池が使用されています。今のところギガトレインは短距離、かつ低速での運用ですが、高速で長距離走行にも耐えられるなら市場が一気に広がるかもしれません」(同)
環境にも優しく、ハイパーループと違って既存の設備を活用して走らすこともできる。世界中でEV列車が席巻する日もそう遠いことではないかもしれない。