現在、アジアや欧州などで導入が進む高速鉄道。未開業の地域でも建設中、または計画が存在しており、近い将来は高速鉄道が世界各地で開業する見通しだ。
そうした中、モスクワ―サンクトペテルブルク間で建設を進めているのがロシア。同区間では1984年から高速鉄道の営業運転が始まったが、これは在来線を利用したもの。対して工事中の新線は高速鉄道専用の路線だ。ただ、西側諸国から車両や部品の調達はできず、28年に予定している開業は延期になる可能性が高いとの指摘も多い。
実は、ロシアの高速鉄道計画自体は停滞気味。車両はもともと自国で製造していたが、2000年代に入って中止。現在、二大都市間で運行中の「サプサン号」は、ドイツのシーメンス社の車両をベースにしたものだ。
他にもシベリア鉄道の高速鉄道化プロジェクトを立ち上げ、23年にはモスクワ―カザンの高速鉄道を開業するはずだったが、19年に白紙に。莫大な建設費に加え、採算面において不安を抱えていたことが原因とされている。そのため、現地では「旧ソ連圏における高速鉄道先進国は、ロシアではなくウズベキスタン」という声もあるほどだ。
ウズベキスタンでは11年に首都タシュケント―サマルカンド間で運行を開始。15年にはサマルカンド―カルシ、16年にはサマルカンド―ブハラでそれぞれ延伸開業。さらにキルギスを経由して中国と結ぶ、高速鉄道プロジェクトが進行中。昨年12月27日には工事の起工式が行われ、30年の完成を目指している。
“青の都”と謳われるサマルカンドは、シルクロード時代からの古都、ブハラも同様にイスラム色の強い街で、いずれも世界遺産に指定されている人気観光地。そのため、同国を訪れた旅行者は高速鉄道で移動するのが一般的だ。
記者もプライベートで同国を訪れた際に高速鉄道を利用。揺れや騒音は少なく、嬉しいことに飲み物や軽食の無料サービス付きだった。車窓の景色は平原ばかりで代わり映えしないが食堂車も連結しており、ケバブやプロフ(※ウズベキスタン風炊き込みご飯)といった現地グルメも堪能できる。そういう意味では思った以上に満足度が高かった。
なお、ウズベキスタンは物価安。所要時間2時間弱のタシュケント―サマルカンドの運賃は、最上位のVIPクラスが約2500円、2番目のビジネスクラスは約1700円、最安のエコノミーは約1300円。日本の新幹線に比べると、信じられない安さ。少なくともコスパは、高速鉄道の中では世界一かもしれない。
(高島昌俊)
※写真はウズベキスタンを走る高速鉄道