政権が崩壊し、家族とロシアに亡命していることが明らかになったシリアのアサド前大統領。ロシアはかねてよりシリア政府に軍事支援を行っており、23年8月に死亡したプリゴジン氏が代表を務めた民間軍事会社ワグネルが駐留し、ロシアの航空宇宙軍も反政府組織に度重なる空爆を行っている。
そうした経緯を踏まえれば今回の亡命は当然の結果だが、西側以外の国々にとってはロシアの評価を高めることになったと言えなくもない。
「プーチン大統領は23年7月、アフリカ諸国の政府首脳との国際会議で『40以上のアフリカの国々と軍事協定を結んでおり、武器や装備を供与している』と明言。親密な関係にあることを伺わせています」(ロシア事情に詳しい全国紙記者)
特にアフリカは政情不安の国も多く、クーデターによる政権失脚も珍しくない。そうした国々にとって、アサド大統領の亡命は他人事ではなく、ロシアやプーチン大統領の国際的な評価を高めたというのだ。
また、国のトップだけでなく、西側諸国から追われる身になった者たちの受け入れ先としても注目されている。アメリカ国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元局員で、NSAによる大規模な監視網の存在を暴露し、追われる身となったエドワード・スノーデン氏も13年に亡命。22年にはロシア国籍が与えられている。
「ただ、死ぬまで当局の監視下に置かれるのは間違いない。ロシアの体制やプーチン大統領を本心から支持しているのならいいが、仮に打算による亡命であるならば、居心地は決してよくはないでしょう」(同)
クーデターを恐れる独裁者にとって、亡命先が存在するのは何よりも心強いだろう。それがプーチン大統領の描く戦略なのかもしれないが…。