韓国のユン大統領12分、フランスのマクロン大統領25分、ウクライナのゼレンスキー大統領25分…。これらはトランプ氏と各国首脳とが電話会談に要した時間だ。
それに比べ11月9日、石破首相が同氏と行った会話時間はたったの5分。記者団に対し石破氏は「非常にフレンドリーな感じがした」との感想を漏らしたが、通訳を交えわずか5分でいったい何を話したというのか。次期大統領に決まる前ではあるものの、今年4月に自民党の麻生太郎最高顧問がニューヨークのトランプタワーを訪れた際、通訳なしで1時間にわたり2人だけで“サシ会談”が行われたことを考えると、扱いは雲泥の差とも思える。
さらに石破氏は16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため訪れていたペルーで、トランプ氏側から「大統領就任前に外国要人と会談しない方針」を伝えてきたとして、早期面会を断念したことを明かしたが、政治ジャーナリストは首をかしげてこう語る。
「トランプ氏側の説明では、民間人の立場で外国政府との交渉を禁じた米ローガン法に抵触するため、大統領就任前の来年1月までは会談は行わないと判断したというのですが、トランプ氏は14日、米フロリダ州を訪れたアルゼンチンのミレイ大統領と会談していますからね。要は、これまでの接点が皆無で、おまけにいつ首相の座を追われるかどうかわからない日本の不人気な石破氏が単に軽視されたとみられても仕方がありません」
加えてトランプ氏は安倍晋三元首相と蜜月関係にあり、安部氏と石破氏が「政敵」の間柄であったことも周知。それも、会談軽視の要因ではないかとされている。
一方、そんな石破氏は15日、ペルーで中国の習近平主席と初めて会談。ところが、会談前に習氏と交わした握手について専門家らかの失望と批判の声が上がっている。
というのも、基本、外交慣例では相手が右手を差し出した場合、こちらも右手のみで返すのが一般的なマナー。しかし、何を思ったか石破氏は、習氏が差し出した右手をいきなり両手で握り、満面の笑顔でがっちり握手したのだ。
「おそらく、選挙中に有権者にやっていたことがそのまま出てしまったのでしょうが、習氏のほうは石破氏の手に両手を添えませんでした。この映像が全世界に流れたことで、初対面での上下関係を示す間違ったイメージができてしまった可能性は否定できません」(同)
対中強硬路線を鮮明に打ち出しているトランプ次期政権に対し、もちろん習主席は警戒を強めている。日本としてもギクシャクし続ける対中問題の早期解決は懸案材料の一つだが、とはいえ急速に対中融和の姿勢を打ち出せば日米関係に亀裂が入る危険も十分に孕んでいる。
「アメリカとしても首相が石破氏に変わってすぐに中国に傾くとは考えていないものの、日米関係を維持していくためにも日本における現政権の安定は重要になる。しかし、周知にように11日に発足した第2次石破政権も、国民民主の存在感ですっかり霞んでしまっている。基地問題をはじめ防衛費増額問題、自動車関税問題等々、難題が山積する中、石破首相がはたしてどんな手腕を見せることができるのか、米中の視線が注がれています」(同)
来年1月、いよいよ「非常にフレンドリーな感じがした」というトランプ氏との折衝が始まる。
(灯倫太郎)