アメリカでは11月の第4木曜日が「感謝祭」の日で、翌金曜日は「ブラックフライデー」という大規模な小売りキャンペーンが行われる。日本でも同様の動きで、いわばハロウィーンの続きのようなものか。
それは中国でも同様で、11月11日の「光棍節」がそれに当たり、アリババなどが大規模セールを行った。ところが中国は目下、国内消費で大不況の最中。そのため今年は様相がかつてと異なり、年5%の経済成長目的を掲げる中国政府が補助金まで出しているというのだから、何やら本末転倒のようにも思える。
またこの日は別名で「独身の日」ともされるが、今年はとんだ“悪の祭典”となってしまった。
「11日の夜、中国南部の広東省珠海で暴走車が次々と人を轢き死者35人、負傷者43人という大惨事が起こりました。日本で人混みに車で突っ込む事件で思い起こされるのは2008年の東京・秋葉原の通り魔事件ですが、被害者の人数はその4~5倍。相当な衝撃が中国国民の間に広がったことでしょう」(中国滞在経験があるフリーライター)
しかもこの事件、中国当局の発表によれば60歳の容疑者の男が離婚後の調停で面白くなかったためにやった、というのだから、まさしくとんだ「独身の日」になったものである。
ところが、痛ましい事件で人々が鎮魂の思いに暮れ…とは単純に行かないのが、やはりあの国だ。
「当局は13日には献花やろうそくを撤去。SNSではお得意の検閲を行い、あたかも事件が無かったかのようにしています。とはいえ、さすがに完全無視は通らなかったようで、習近平主席が異例の言及をして対応を指示するコメントを出しました。ただ、それも国柄を考えれば、政府がきちんと対応をしているのだというプロパガンダに過ぎない。事件と同じタイミングの12日からは、珠海市で中国国際航空宇宙博覧会が開幕。国内最大の航空ショーが行われ、最新兵器をこれでもかというほど公開し海外にアピールしている。つまり、国を挙げてのイベントを汚したくなかったということです」(同)
国民はたまったものではないだろう。
(猫間滋)