旧文通費が議員引退後の「生活費」に…それでも使途公開が進まない理由

 10月27日の投開票に向けて選挙戦が幕を開けた。「政治とカネ」が大きな争点となり、野党各党はクリーンな政治をアピールしている。15日、東京・高田馬場駅前でマイクを持った日本維新の会・馬場伸幸代表は「政策活動費を廃止し、結党以来、企業・団体献金をもらっていない。旧文通費の領収書公開もやってきた」と訴えたが、自民党政権で長らく先送りにされてきたのが「旧文通費」こと調査研究広報滞在費だ。歳費とは別に、国会議員に毎月100万円が支給され、使途公開の義務がないことから「第2の財布」とも呼ばれている。

 この問題に切り込んだのが、10月16日放送の「報道1930」(BS‐TBS)。番組では、とある参議院議員のこんな声を伝えた。

「余った文通費は議員引退後の生活のために蓄えていた」

 これを受けて松原耕二キャスターは「これひとつ確認なんですが、参議院議員の方、他の国会議員の方もおっしゃっていたんですが、参議院議員の方が引退後のために蓄えている。『あるんですよ』なんてことをおっしゃるんですが、本当なんですか?」と質問すると、朝日新聞ゼネラルエディターの林尚行氏は「たぶん本当だと思います」と即答。「言ってしまったら元も子もないと思うんですけど、本来ダメですよね。ただ、これに対する罰則はないですし、透明化の義務もないということなので、これまさに法律の不備だと思いますのできちんとシステムを変えないといけない。制度を変えないといけない」と続けた。

 旧文通費については、前述した日本維新の会だけでなく、自民党、公明党、立憲民主党などほぼすべての党が「公開」を公約に掲げているが、SNSでは《議員引退後の生活費に税金が…》《自民党が公約を守るわけがない》《過半数とっても放置するに決まってる》などとさまざまな声が寄せられていた。

「旧文通費に関しては、今年5月、日本維新の会と自民党が『立法措置を講ずる』とした合意文書を交わしたものの、具体的な時期を記載していなかったことから、自民党が法案提出を先延ばしにしたという経緯があります。これに維新の会は『嘘つきだ』と猛反発しましたが、後の祭り。政治資金規正法の改正案も骨抜きのまま可決されました。番組でも触れていましたが、参議院には解散総選挙がなく、もちろん退職金もないことから、旧文通費を自身の蓄えにしている議員は少なくないとか…。少なくとも旧文通費の使途公開が制度に組み込まれるのは、来年の参議院選挙の後になるのではないでしょうか」(政治部記者)

 16日には選挙情勢に関して、「与党で過半数の勢い」と報じられた。政権交代が起きない限り、旧文通費の不適切な流用を防ぐ手立てはないかもしれない。

(福島シゲル)

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