賛成派にしてみれば「やったれ」といったところかもしれないが、反対派にしてみればいい面の皮といったところだろう。日本維新の会の馬場伸幸代表が何を思ったか、6月11日にネット番組で、あの大阪都構想について、「改めて実現を目指す」と語った。
都構想は、2010年に大阪で最初に地域政党の「大阪維新の会」が結成された最大の結党理由。だが橋下徹市長時代の15年と松井一郎市長時代の20年に行われた賛否を問う住民投票でいずれも否決。橋下、松井両氏共にこれを期に政治家を引退しているので、「結党以来の悲願」であると同時に、最大の「地雷」でもある。その再々チャレンジを行いたいというのだ。
「二度否決された都構想ですが、賛否はわずか1%あるかないかの僅差でした。だからもう一度天秤にかければいつ成立してもおかしくないわけで、諦めきれない気持ちは分かります。ただ、二度の住民投票だけでほぼ10億円ずつかかっていますし、しかも二度目はコロナ禍が広がりつつある中で強硬されたので、非常に評判が悪かった。それよりも二度否決されたものをまたほじくり返すわけで、馬場代表は『しつこいという感想が出てくると思う』と前置きをしていますが、しつこいで済むならともかく、民主主義の否定と言われても反論は出来ないでしょう」(在阪マスコミ記者)
なぜ今、また都構想が出てくるのか。大阪のマスコミの解説によれば、4月28日に行われた島根と東京の補選でいずれも維新は敗退。昨年に行われたある調査で、9%あった政党支持率が今年5月は4%と半減し、本来なら自民党の裏金問題で受け皿となるはずがそうはなってはおらず、昨年4月に行われた統一地方選挙での躍進が、早くも息切れしたとの焦りがあるとされる。だが馬場代表の話したところをいま少し深読みすれば、また別の政治的意図が読取れなくもない。
「何とも姑息というか、恣意的な政治解釈とも受け取れるのが、次あった場合の住民投票のやり方です。前の2回は投票権は大阪市民に限られていたものを、今度は大阪府民まで広げるべきとしています。大阪での維新人気と、大阪市が消えて東京のような区に分割・編成されることに対する大阪市民のアレルギーを考えれば、そのやり方なら勝てるだろうとの打算があるからです。またそのためには法律の改正が必要で、その場合、どの政党と連携が可能なのかとも言っています。これはつまり、次の国政選挙で維新に歯向かう政党には関西で潰しにかかるという脅しとも読み取れる。また裏金問題で揺れた政治資金規正法改正では、自民と公明・維新が同じ船に乗った。つまり連立参加に維新は含みを持たせているわけで、直接的には『常勝関西』を誇る公明党にブラフをかけているようにも受け止められます」(政治部記者)
しかし馬場代表、都構想復活を言い出すのも「(大阪府・市共にトップは維新という体制で)大阪が上手くいっている」ことを前提としているが、これ自体大きな勘違いで、夜郎自大ともいわれる。
「維新政治は、謳い文句は『身を切る改革』ですが、新自由主義の考え方で、社会保障や福祉でのサービスカットが多い。その結果として、コロナ禍では病院・保健衛生所の統廃合で医療が追いつかずに、大阪から患者が溢れ、患者がなだれ込んだ和歌山県知事から苦情が寄せられるということがありました。また現在、介護保険料は大阪が全国ナンバー1という不名誉を被っています。最近の万博関連でも、万博スタッフには時給2000円という大盤振る舞いの一方、非常勤の職員は1000円ちょっとという矛盾を行っていますし、小中学生の学校単位の無料招待では、地元の教育委員会をすっ飛ばした大阪市の学校への直接アンケートで、『不参加』という回答項目がなかったという動員作戦が交野市長の暴露で暴かれたりもしました」(同)
日本維新の会は確かに全国政党だが、それもあくまで大阪人気に依ってのこと。その辺りを十分に理解できなければ、結局はローカル政党と言われ続けても仕方ないのかも。
(猫間滋)