佐藤優「ニッポン有事!」戦争の時代に改めて考える創価学会「世界宗教」の思想

 前回に続いて、6月29日に東京で行われた創価学会第3回本部幹部会について取り上げる。

 この会合で、原田稔創価学会会長は、創価学会が政治に関与する理由についてわかりやすく説明している。この文脈について筆者に関する言及がある。

〈作家で神学者でもある佐藤優氏は、「世界宗教とは、政治の現実の泥にまみれるなかで、自分たちの価値観を実現しようとする困難な道を選ぶ宗教のことだ」とし、迫害を乗り越えて「与党化」し、やがて宗教改革に至るキリスト教の歴史と重ね合わせながら、「創価学会が世界三大宗教の一つとなる時代」の到来を展望しています。〉(7月6日「聖教新聞」)

 筆者は創価学会の信者ではない。プロテスタントのキリスト教徒だ。教派としては日本基督教団(日本におけるプロテスタントの最大教派)に属している。筆者は池田大作氏を傑出した宗教指導者であると尊敬しているし、世界宗教への道を歩む創価学会は、現実的に日本の平和を守り、国民福祉を増進する上で重要な役割を果たしていると認識している。この文脈で創価学会を支持母体とし、学会と価値観を共有する人々によって構成されている公明党が重要な役割を果たす。

 原田会長は、創価学会が政治活動を行う必然性についてこう述べる。

〈創価学会として文化部による政治進出に挑んでいた当時、戸田先生は支援活動の意義を、3点にわたり論じられました。

 1点目に、それは仏縁を結ぶ下種(引用者註*仏法の話を伝えていくこと)活動であり、功徳を積みゆく、自分自身のための宿命転換の戦いである。

 2点目に、組織の最先端まで見えるようになる、個人指導・訪問激励の戦いである。

 3点目に、決して〝数〟で功徳が差別されるのではなく、一人一人が自身の持てる力を悔いなく発揮し、すがすがしい気持ちでやりきれるかどうかの戦いである。

 こう振り返ってみたとき、支援活動は決して〝普段と一線を画す活動〟ではなく、同一線上にあるものであり、「信心即生活」という私たちの信条が、政治という一分野において実践されるものにすぎないことが分かります。すなわち、どこまでも学会は「折伏の団体」であり、ゆえに、あらゆる活動もまた、一切が下種の拡大に通じていくのであります。〉(前掲「聖教新聞」)

 創価学会は世界観型の宗教だ。原田会長が述べるように「信心即生活」なのである。信心は生活のすべての領域に及ぶのであるから、そこから政治を除外することはできない。創価学会の価値観に基づくと、政治は生命(人間に限らずすべての生物と無生物を含む宇宙生命)と人間のために行われるのだ。この目的に照らして戦争を避け、平和を実現することが重要になる。

 池田大作氏は「人と会うこと」すなわち対話によって平和を実現することに生涯尽力した。この対話の精神を基本に据えて、われわれは東アジアで戦争が起きることを全力で阻止しなくてはならない。

佐藤優(さとう・まさる)著書に『外務省ハレンチ物語』『私の「情報分析術」超入門』『第3次世界大戦の罠』(山内昌之氏共著)他多数。『ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか』が絶賛発売中。

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