創業178年を誇る世界最古の旅行代理店である英国「トーマス・クック」が、9月23日に破産申請を行い経営破綻した。同社が営業を停止したことにより、世界中を旅行している約60万人が帰宅困難になったとみられ、あまりに無責任な事態に驚きの声が広がっている。
「イギリス政府は、海外旅行中のイギリス人15万人以上を帰国させる“マッターホルン作戦”を開始し、2週間にわたりチャーター便を運行することを決定。フランス通信社によれば、『第二次世界大戦以来、最大の帰還作戦になる』とのことでした」(社会部記者)
同社はここ数年、経営不振にあえぎ、17億ポンド(約2278億円)の負債を抱えていた。今年8月には中国の投資会社から9億ポンドの資金調達に成功したものの、追加で必要となった2億ポンドが調達できず、破産申請のやむなきに至ったという。これにより、イギリス国内9000人を含む世界2万2000人が職を失うことになり、EU離脱期限が迫るイギリスにとって大きな痛手となりそうだ。
「日本では2017年に『てるみくらぶ』が突如、経営破綻し、約3000人が帰宅困難になりましたが、その200倍の規模ということ。まだイギリス人旅行者以外への救済措置は明らかになっていないため、多くの人たちが不安な中、海外に取り残されたままとなっているのです。イギリスでは、2年前にも格安航空会社の『モナーク航空』が経営破綻し、11万人が帰宅困難になるという事態が発生していました。最近では個人がインターネットで航空券を格安購入できるようになったため、旅行代理店は使われないようになり、また格安航空会社は価格競争を繰り広げ、このような経営破綻が相次いでいます。旅行者としては気をつけようもありませんが、今後も同じような破綻や帰宅困難は続々起こると考えられます」(経済ジャーナリスト)
他人事ではない。
(小林洋三)