吉野家“テイクアウト専門”大量出店計画は大丈夫か

 吉野家ホールディングス(HD)が、2024年度にグループ全体で300店の新店を開業するという積極出店の方針を打ち出したことを、日本経済新聞が報じている。中でも国内の「吉野家」はテイクアウト専門店を中心に100店舗超を新規出店するというが、「どうせなら店で食べたい」との声も聞こえてくる。

「同社は2020年に新型コロナ感染拡大による業績悪化を受け、同年度中にグループ店を最大150店舗閉店させると発表。国内の吉野家も約40店舗が店じまいしました。しかしコロナが5類に移行し外食需要が戻ったこともあって業績も回復し、大量閉店から打って変わって今度は強気の大量出店に舵を切り替えたのです」(経済ライター)

 ただ、前述の通り大量出店のメインとなるのは吉野家のテイクアウト専門店だという。コロナ禍以降も“中食”の需要は残り続けていて、HD決算資料によれば23年度の吉野家の売上高に占めるテイクアウト比率は37.5%(24年2月期間中間時点)だった。専門店であれば店舗面積が従来の半分以下で済み、配膳作業がないことから従業員も最小限に抑えることができる。そのため、同社はテイクアウト専門店を出店の軸にしていく方針で、25年2月までに約160店にまで増やす計画という。

「ただ、中食需要は今後、萎んでいく可能性もあります。吉野家のテイクアウト比率も、21年度が48.1%、22年度が39.4%、そして23年度と実は減少していますからね。つい最近、唐揚げ店の倒産が前年の9倍になったと大きな話題になりましたが、あちらもほとんどがテイクアウト専門店。新規出店の軸にしていくのは少々怖い気もします。また、短期間での大量出店は店員の教育が追いつかずにあっという間に閉店していくというのも飲食チェーンの“あるある”。これで店舗によってサービスにムラができるようなことがあれば、不満の声が一気に広がるかもしれません」(飲食店コンサルタント)

 1980年、吉野家は一度倒産しているが、その原因は急速な店舗展開だったとされる。今回のテイクアウト急拡大が失敗に終わらないことを願いたい。

(小林洋三)

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