人手不足で給料アップの“蚊帳の外”大規模リストラの標的にされる中高年への大逆風

 今年の春闘のベアはプラス5.25%。少子化による慢性的な人手不足で、採用は売り手市場だ。例えばカプコンはプラス6.5万円、JFEスチールはプラス5万円と、まるで競うかのようにして新卒初任給を上げる企業もある。ユニクロのファーストリテイリングは昨年に、最大で4割の年収アップの人事制度を採用、つい先日、ユニ・チャームも最大で37%の年収アップという人事制度を採用したことが報道された。

 日本はいま、「失われた30年」の原因はデフレ経済にあって、企業は収益を社員に還元すべきと態度を改めている真っ最中。これならいずれ実質賃金の上昇が物価高を上回り、本格的な経済再生につながるという雰囲気に包まれている。半面でそれは正しいだろう。ところが…。

「一方で、大企業ではリストラの嵐が吹き荒れています。住友化学は2023年度(2024年3月期)最終赤字が3120億円と過去最大となる見込みで、グループをあげて約4000人ものリストラに着手するとしています。また資生堂も約1500人、オムロンでも国内外で2000人の人員削減を行うとしています。日経平均が4万円を超えて好調なのも、一部の企業が全体を押し上げているから。昨今の資源高や世界的政情不安から、産業や分野別に見れば苦しんでいる企業は多数あります」(経済ジャーナリスト)

 例えば住友化学の場合、赤字の最大の理由は製薬子会社の不振。石油化学の低調も足を引っ張っている。資生堂、オムロンは共に、中国での不振が大きい。そんな中、リストラ対象になるのが、中高年世代だ。

「資生堂は45歳以上かつ勤続20年以上の社員を対象に早期退職を募り、オムロンも国内外2000人のリストラのうち、国内の1000人については40歳以上かつ勤続3年以上の早期退職を募るとしています。東京商工リサーチでは、4月23日時点で『早期・希望退職』の募集を行う上場企業は21社で、昨年同時期の16社を5社上回り、年間で1万人超のペースだとしています」(同)

 未来ある若者は引く手あまただが、長年居ついたオジサンはポイ捨てと、何とも中高年には苦しい世の中となっている。はたまた一方、最近は「卒業生」や「同窓生」といった意味をもつ「アルムナイ採用」という再雇用もトレンドで、一部には7割の企業が実施したことがあるといった数字も。

 いずれにせよ日本社会での雇用の流動化の波には逆らえない状況のなか、オジサンはリスキリングするなり何なり、身の振り方を本格的に見直す必要がありそうだ。

(猫間滋)

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