北朝鮮の国営テレビが4月6日に放送した金正恩総書記の視察映像における“あるシーン”が話題になっている。
正恩氏が幹部らを随行させ視察したのは、平壌の和盛地区に建設中の「1万世帯住宅」の建設現場。映像には和盛地区を歩きながら何やら指示を出す正恩氏の姿と、その指示事項を手帳に書き留める側近らの姿が映し出されていたが、その集団の中に、一人だけ携帯電話を操作する、いわゆる「歩きスマホ」状態の美女の姿が確認できるのだ。北朝鮮ウオッチャーが語る。
「言うまでもなく、独裁国家・北朝鮮における正恩氏は絶対的存在。したがって正恩氏が何か話をしている時に目をそらしたり話を挟むなど、同氏の言動を妨げるような行為は絶対あってはならないこと。ところが、この女性は顔すら上げず、指示も“ながら聞き”している。通常、北朝鮮では放送前には厳しい事前チェックが行われるため、国営放送では誤ってもこんなシーンが流れるはずがない。つまり、彼女がこの国で絶大な権限を与えられていることは間違いなく、韓国当局もこの映像に強い関心を持っているんです」
この女性は労働党宣伝扇動部副部長という肩書を持ち、正恩氏の儀典を担当する玄松月(ヒョン・ソンウォル)。2018年には三池淵管弦楽団の団長として北朝鮮芸術団を率いて韓国を訪問したことで存在が知れわたり、その後、正恩氏の儀典担当の役職に就いたとされている。
「玄氏はもともと、銀河水管弦楽団と普天堡電子楽団の声楽歌手として有名で、一説によれば正恩氏の個人秘書を務め同氏との間に男女関係もあった、との韓国報道もあります。しかし正恩氏よりも5つ年上だったこともあり、父親の正日氏から引き離され、正日氏の死去後、金敬姫、張成沢両氏により推薦されたのが、銀河水管弦楽団の看板声楽家だった李雪主現夫人だったのだと。ただ、その際にやっかみもあり、李雪主氏の陰口が広がったことで関係者の多くが処刑されるという事件が起こった。しかし不思議なことに玄氏だけが処罰を免れたため、彼女の妊娠説が囁かれたこともあったようです」(同)
一説には、そのあとに生まれたのが男の子で、それが「表に出てこない長男」の存在なのではないか、と伝える韓国メディアもあるが、むろん信憑性のほどは定かではない。
一方、韓国情報筋によれば、そんな玄氏が最近頻繁にメディアでも登場している正恩氏の娘、金主愛(キム・ジュエ)氏の外交デビューをサポートするのではないかとの情報もある。
「労働党宣伝扇動部副部長に抜擢されていることを考えると、正恩氏の寵愛を受けていることは間違いない。仮にジュエ氏が外交デビューする際には随行し、全面的にサポートするのでは、という韓国の専門家も少なくない。むろんその時期はわかりませんが、これまで付いていた『愛するお子さま』『尊貴なお子さま』という形容詞がなくなったことで、ジュエ氏については、もうその説明がいらない、つまり彼女こそが後継者である、と位置づけられたと考えることもできる。外交デビューは意外と早いのではとの見方もあります」(同)
はたして、ジュエ氏の外交デビューに関して「歩きスマホ」を許された女性は担う役割とは…。
(灯倫太郎)