今年に入って一人のアーティストが突然の「活動中止」を告知した。予定されていたライブはすべて中止となり、SNSの更新も途絶えた。ファンの間では「何があった?」と安否を気遣う声が挙がっていたが、表舞台から消えた理由は違法薬物だった。お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火が、注目の裁判をリポートする。
東京地裁で今年3月、ネットを中心に活躍する歌手が被告人の刑事裁判が行われました。なんと、法廷の入り口には裁判所職員が立って「ケータイの電源は切ってから入廷して下さい」と注意をして、スマホの画面を確認するという厳重なチェック体制。それなりに特別な裁判ということなんでしょう。
被告人のYouTubeチャンネル登録者数は60万人超え、Xのフォロワー数は80万人超え。ある人気アニメの主題歌も担当している人物なのです。それだけの人気者だからか、傍聴席は若い女性が目立っていました。ファンなのか、たまたま傍聴に来てなんとなくこの法廷に入った女子大生なのか。
罪名は、麻薬及び向精神薬取締法違反。
起訴されたのは2つ。1件目は、今年の1月11日に東京都新宿区の歩道上でコカイン0.157グラムとケタミン0.012グラムを所持した件。2件目は、今年1月上旬から1月11日までの間にコカインとケタミンを摂取した件。違法薬物の所持と使用です。
罪状認否で被告人は「間違いありません」と罪を認めていました。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校中退後に職を転々として、2023年に音楽プロダクションを設立。前科は無く、今回が初めての刑事裁判になります。
被告人は2023年12月に外国人の売人からコカインとケタミンを購入したという。そして犯行当日。被告人は新宿の歩道上で通行人に怒鳴ったり、追いかけ回したりしていたので目撃者が110番通報したとのこと。駆け付けた警察官が被告人の所持品検査をしたところ、ポケットから白い粉が付着したストローを発見。鑑定したところ違法薬物だったので逮捕に至ったというのが事件の流れです。
ストローにちょっとだけくっついていた違法薬物の所持なので、起訴状のグラム数が少なめだったんですね。
取り調べに対して被告人は「去年12月に初めて新宿歌舞伎町で購入して、ストローで吸った。今年1月10日に黒人の男性から薬物を買ったら、オマケでティッシュに包まれた錠剤3個を貰ったのでその場で飲み込んだ。会社のことで悩んで自暴自棄になっていた」と供述しているそうです。
この後、被告人質問が行われるかな?と思っていたら、被告人の自宅から他の違法薬物が発見されたということで、追起訴予定。初公判は10分弱で閉廷となりました。歴としては浅いけど、種類としてはいろいろ手を出していたようですね。
次回は4月の予定となっています。また傍聴席が女性で埋まってしまうのでしょうか。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。