「あってはならない話で、まことに遺憾だ」。経団連の十倉雅和会長は3月4日の記者会見でこう語っていた。同日にメディアで報じられた、公正取引委員会が「下請けイジメ」をしていたとして、日産に勧告を行う方針だと報じられた件についてだ。
「とうとう日経平均が4万円を突破し、日本経済が本格的再生を図るには企業がどれだけ賃上げできるかにかかっている、このタイミングですからね。今年の春闘の集中回答日は3月13日で、大企業の5%の賃上げ目標はだいぶ達成されそうな雰囲気です。その動きが中小企業にまで広がればと、日本経済会全体で賃上げムードが醸成されている現在、日産のような国を代表するような企業が下請けイジメを、しかもタイヤホイールなどの部品メーカーに30社に支払の減額を要求し、その総額は30億円にもなるという話ですから、見識も何もあったもんじゃありません」(経済ジャーナリスト)
東京商工リサーチが2月中に行った調べでは、賃上げの動きは中小企業にまで広がり、資本金1億円未満の企業の84.9%の企業で賃上げの検討が行われているとされ、「いよいよ中小企業まで」と言われていたところに、大きく水を差す動きと言わざるを得ない。十倉会長ならずとも、誰もが「いったい何をやっているんだ」と吐き捨てたくもなる話だ。
そこで好調な日経平均に目を移せば、マーケット関係者の間では「7人の侍」の貢献あってのことだと言われている。主に7つの会社が全体の株高を引っ張ているという意味だが、うち4社は半導体関連企業。残る3社がトヨタ、スバル、三菱商事で、結局、日本経済の趨勢は自動車メーカーによるところも大きいわけだ。では当の日産はどうかというと…。
「日産の株価は一時的に大きな上下動はあるものの、年初来で560円~580円の水準で推移しています。5年単位で見ても、おおよそこの水準。つまりは全体の嵩上げに貢献していないわけで“蚊帳の外”といった具合です」(同)
さすがに全体のムードに水を差すだけのことがあることを、株価は正直に語っているのだった。