破談のホンダと日産「次なる交渉先」はテスラか鴻海か…エヌビディアの名前も浮上

 ホンダと日産自動車の経営統合が破談となったが、早くも話題は“次はどの企業と交渉するのか”に注がれている。経済誌記者が背景を明かす。

「破談となったホンダと日産だが、世界でEVシフトが進むなか『100年に1度』と言われる自動車業界の変革期をもはや単独で生き残るのは難しい」

 世界の自動車業界の動きを見ると、24年の販売台数トップはトヨタで1082万台。しかし、他の日本勢はなんとも苦しい。ホンダは381万台、日産は335万台で世界の7位と8位に甘んじ、それぞれ以前より100万台近く販売台数を落としている。

「ホンダも日産も生き残りをかけての経営統合案だったがこれがポシャったため、早くも次の新パートナーを探す動きが活発化している。そんな中、英紙フィナンシャル・タイムズが日産の新パートナーとしてテスラに出資を要請する計画が浮上していると報じたのです」(同)

 この報道の背景には根拠がある。菅義偉政権下でEV化を推進した、元経済産業省参与でテスラ社外取締役を務めていた水野弘道氏が動いているというのだ。

「今年度800億円の赤字となり、経営再建が待ったなしに追い込まれつつある日産はホンダより苦しい。そこで経営統合破談後、菅義偉元首相が動いたといわれている。菅氏は選挙区が神奈川で、地元企業である日産の苦境を看過できず、かつての部下である水野氏らにどうにかできないかと働きかけたというのです」(同)

 だが報道後、水野氏はXで完全否定し、文春オンラインの直撃取材を受けた菅元首相も「関与していない」と回答したという。

 一方、ホンダの方には、台湾の電子機器製造大手・鴻海(ホンハイ) 精密工業が協業を提案したと日本経済新聞が報じた。ホンダ関係者は日経報道を否定しているというが、自動車業界記者はその裏側をこう明かす。

「鴻海が当初動いていたのは日産買収。その流れでホンダを巻き込もうと提携を視野に入れていて、その流れでホンダの名が浮上した可能性がある」

 では、ホンダは今後どう動くのか。最大のポイントとなるのがトランプ政権が発動する自動車関税だ。

「ホンダは先を見越して米オハイオ州にある3工場に1500億円を投じ、トランプの政策に対応できるよう体制をとろうとしている。その一方で、日産が提携を模索するテスラや鴻海とも交渉を重ねているとの情報もある。もっとも、ホンダは単に車にとどまらず飛行機からITまで独自技術があり、それには半導体メーカーのエヌビディアなども注目している。今後あっと驚く提携先が現れるかもしれません」(同)

 霞が関関係者が指摘する。

「日本の屋台骨を支える自動車産業の行く末だけに、報道が事実なら元首相のみにまかせておかず、関税問題も含め、できうる限り石破首相に頑張ってほしいものだ」

 世界の自動車動向から目が離せない。

(田村建光)

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