山崎元・大江英樹「庶民の救世主」が遺したバラ色運用術(1)「投資信託は9割以上がクズ!」の深意

 老後の生活資金をどうするかは、多くの中高年にとって悩みのタネ。しかし、先ごろ他界した経済評論家・山崎元氏、経済コラムニスト・大江英樹氏は、「正しい知識を身につけ明確な計画を立てることで、その不安は解消できる」と提唱し続けてきた救世主だった。両氏の〝遺言〟と功績をここに振り返る。

 今年元日に65歳で亡くなった山崎元氏は、「超簡単 お金の運用術」(朝日新書)などの著書のほか、雑誌連載やテレビ番組で株式投資・資産運用を解説。〝ヤマゲン〟の愛称で「ほったらかし投資」をいち早く提唱した。本誌でも10年ほど前に「なっ得! オヤジのためのマネー講座」を連載。個人投資向けのわかりやすい説明で好評を博した。

 奇しくも同日に71歳で旅立った大江英樹氏は、野村証券に勤務後、資産運用やライフプランをテーマに執筆や講演に従事。こちらも「90歳までに使い切る お金の賢い減らし方」(光文社新書)など、多数の著書を遺している。

 両氏と親交のあったフィナンシャル・ウィズダム代表でファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が解説する。

「ヤマゲンさんは、高コストな運用商品を安易に販売する金融機関の姿勢を一貫して厳しく指摘してきた。一方の大江さんは、確定拠出年金法が施行される前から確定拠出年金ビジネスに携わり、低コストの資産運用を提唱してきました」

 前述の本誌連載でもヤマゲン氏は「投資信託は9割以上がクズ! 始めるなら手数料を吟味するべき」などと繰り返し指摘している。

 投信にかかる手数料は、顧客から見て投信を買う時にかかる「販売手数料」と、投資資産の運用・保管・事務などの経費としてかかる「信託報酬」の2種類がある。前者はわかりやすいが、顧客側が見落としがちなのが後者だ。

 当時、証券会社や銀行の店頭でよく売れている投信の信託報酬は年率1%台後半が多く、利益がなくても毎年引かれ続けた。

「10年後の今は、多くの金融機関で信託報酬0.1%以下の商品を提供するようになっています。ヤマゲンさんの提言は金融庁も少なからず参考にしており、金融機関に改善を促していました。この点は、大きな功績と言っていいでしょう」(山崎氏)

 ヤマゲン氏が個人投資家に推奨してきたのがNISA(少額投資非課税制度)と個人向け国債の活用だ。

 カネの運用には20%の税金がかかる。100万円の運用がうまくいき、「1割(10万円)儲けた」と思っても、税引き後の利益は8万円。実質8%の儲けにすぎない。この税金を軽減することができるNISAは金融機関に専用の口座を開いて、株式や株式投資信託に投資して利用する。

 非課税の対象になるのは、「つみたて投資枠」なら120万円、「成長投資枠」なら240万円までの投資の収益。両者は併用できるので最大360万円までの投資の収益が非課税となる。昨年まで5年間に限定されていた口座開設期間が今年から無期限となったのも、利用者にとっては大きなメリットだ。

(つづく)

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