近年、テレビ業界では“ドラマ枠”を増加させる傾向が強くなっている。ところが乱発されたことでドラマ自体の質が劣化し、低視聴率にあえぐパターンが見受けられる。
特に不調が顕著なのはフジテレビだろう。俳優の竜星涼主演の1月期ドラマ「スタンドUPスタート」(水曜10時)は、全話平均視聴率3.3%で、これまで3.8%と同局で過去最低だった山田涼介主演の「親愛なる僕へ殺意を込めて」(22年)をワースト更新。さらに7月期、体調不良の鈴木京香に代わって急きょ若村麻由美が主演を務めた「この素晴らしき世界」(木曜10時)が3.9%、10月期の向井理主演「パリピ孔明」(水曜10時)も4.4%、さらに成田凌主演の7月期「転職の魔王様」(月曜10時)5.0%、同じく7月期の杉野遥亮主演「ばからもん」(水曜10時)も5.0%にどまるなど、軒並み惨敗している。
もっとも、他局もフジテレビを笑っていられない悲惨な状況であることは同じだ。一見好調そうに見えるテレビ朝日も、新設された日曜10時枠が大爆死中。8月期に放送された「何曜日に生まれたの」は、野島伸司脚本、飯豊まりえ主演と豪華なメンバーを揃えたものの、最初の1~2話くらいまで一体どういうジャンルのドラマなのかまったく先が読めず、早々と離脱する視聴者が続出。終わってみれば3.3%と、テレビ東京を除く民放キー局のプライム帯における今世紀最低視聴率を記録してしまった。しかも同枠の10月期「たとえあなたを忘れても」は3.2%に終わり、同記録をすぐさま更新するという”死の枠”化している。
テレビ誌ライターが語る。
「近年はTVerなどの見逃し配信に視聴者が流れていることもあり、かつてのように二桁の視聴率を記録するドラマは激減しています。2023年は7月期に放送されたTBS日曜ドラマ『VIVANT』が大きな話題になり、平均視聴率14.3%でこの年の1位に輝いています。二桁を超えたのは他に、13.0%のテレ朝『相棒21』、12.9%のTBS『ラストマン-全盲の捜査官ー』、11.3%の『相棒22』のわずか4作品だけ。マンネリ化が叫ばれている相棒シリーズがなかなか終結しないのは、テレ朝にとってキラーコンテンツだからです」
一般的に連続ドラマは4%を下回ると“打ち切り”が検討されるというが、2023年はなんと10本ものドラマが名を連ねている。連ドラは再放送やソフト化がしやすく、また広く普及した見逃し配信のアクセス数が稼ぎやすいといわれていることもあり、2023年の10月期は、NHK、民放合わせて39枠にまで増加している。しかし、その多くは大惨敗しているのだ。
視聴者も有名俳優がただ顔を出しているだけでは見向きもしなくなった。2024年は量よりも質が求められてくるのではないだろうか。
(ケン高田)