2023年はトラックや乗用車の「タイヤ脱落事故」が相次いだ年だった。国土交通省は発生の原因を「タイヤ交換時の作業不備」と「タイヤ交換後の保守管理の不備」の2つの要因と推定し、ドライバーに注意を呼びかけている。
11月15日には札幌市でオフロードの軽乗用車からタイヤが外れて4歳の女児に直撃、同30日には島根県で走行中の大型トラックから脱輪し歩行者が大けがをしている。また、12月1日には青森県八戸市の八戸自動車道で、走行中の大型トラックから後輪の左側タイヤ2本が外れ、道路脇で作業をしていた32歳の男性会社員を直撃。男性はその後、死亡した。
ホイール・ボルトの折損等による車輪脱落事故は2002年4月以降、2022年3月末までに1188件発生しており、過去5年間の発生月別推移を見ると、11月から3月の冬期が多く、12月が特出している。スタッドレス等の冬用タイヤに交換した後、1カ月以内に発生する傾向があるようだ。自動車ジャーナリストが語る。
「タイヤの作業不備というのは、タイヤを規定の締付トルクで締めない、また脱着時にホイールやボルト、ナットのサビなどに対する清掃が不十分なことが挙げられます。また、タイヤを交換した際、本来であればしばらく走行してから『増し締め』を行わなければならないのですが、忘れているドライバーも多いのではないでしょうか。車両のタイヤ交換時期が冬期に集中し、交換後1カ月以内に脱落が発生しているのは、ドライバーが殺到し、工場での作業時間の制約が生じたことにも原因があるようです」
国土交通省は、車輪脱落について、QRコードを用いるなどして点検整備の実施について説明している。また、日本自動車工業会では、事業者向けにホイールナットの緩みが一目で分かる「連結ナット回転指示インジケーター」の使用方法を案内している。
22年度の車輪脱落事故発生件数は140件あり、21年度の123件より17件増加している。また約56%が冬期に集中していることや、車輪脱着作業後1カ月以内に約53%発生していることも明らかになっている。タイヤの脱落は、一歩間違えば死亡を伴う大事故に発展する可能性が極めて高く、「気がつかなかった」では済まされないのだ。
この時期、冬用タイヤに交換したドライバーも多いだろうが、必ず1カ月以内に「増し締め」することを忘れないようにしたい。これ以上、タイヤ脱落による被害者を、そして加害者も増やしてはならない。
(ケン高田)