損保ジャパン調査委が中間報告書を公表、人間の弱さ滲む中身に「読み応えある」との声

 ビッグモーターと好ましからざる蜜月関係にあった損保ジャパンによる保険金不正請求問題について、親会社のSOMPOホールディングスは外部の弁護士からなる調査委員会がまとめた「中間報告書」を10月10日に公表した。

 するとその内容が、長いものに巻かれる人の弱さや組織の脆さで溢れているとして、SNSで「読みごたえがある」「大作だ」と評判になっているのだ。

 引用すると、こんな具合だ(《》内が引用)。

 ビッグモーターの整備工場等の品質については、《SJ(*損保ジャパン)従業員からこれを疑問視する声が度々寄せられて》おり、《工場長たちは、日計の売上げが不足すれば、 幹部から、全員が閲覧するグループLINE上で叱責されるので、何とか売上げを捻出しようとし、それが不正につながりかねないこと》《一部の工場では対応品質が低くなっていること》などが損保ジャパン社員から報告されていたにもかかわらず上層部に明確に伝えられることはなかった。

 5月16日、損保ジャパン社長は、《他の損保会社の社長らとの懇親会終了後、 会場において、BM(*ビッグモーター)による不正請求事案のことを聞かされ、SJとしてどのような対応をするつもりかを問われたが、それまで部下から上記不正請求事案について一切報告を受けていなかったことから、まともに回答することができなかった》

 どうも情報の共有とか改善の動きはなかったようだ。そして、

 7月6日、損保ジャパンの役員ミーティングでは、追加調査もせずビッグモーターとのDRS(事故の際に修理先を紹介するサービス)契約を再開するとの選択肢が社長から提案されると、《その場の議論の成り行きで、僅か30分程度の間に》、それまで話されていた《方向性とは正反対の重要方針が正に急転直下で決定されるに至っており、その間のプロセスは相当に粗雑であったとの感は拭えない》

 と、まるで戦時日本の御前会議のような無責任体制だったようで、

 契約再開に関しては、《議論の過程で、追加調査の必要性を述べる意見もあったが、最終的には上記提案に異論を述べる者はおらず、全会一致でBMに対するDRSの再開が決められた》
 
 と、まさに「空気」のようなものが支配していた様子が記述されている。またここでは、「未来志向」というパワーワードが出てくる。
 
 損保ジャパン社長はビッグモーター社長を、《信じるというビジネス判断もあり得、未来志向で、BMに品質の高い板金工場になってもらうという前提で進むのはどうかという趣旨の意見を述べた》
 
 そして金融庁に対しては、

《ビフォーシートが存在することや、C4部長(*ビッグモーター部長)の指示に基づいたアフターシートの存在を認識しながら、これを記載することなく》、《ヒアリング内容がBM上層部によって改ざんされた事実はあえて報告しなかった》

 のだという。おそらくは「なんとかなる」との「未来志向」が働いたのだろう。《事実を隠ぺいしていたとのそしりを受けてもやむを得ない》と調査委はピシャリと指摘している。

 ただし、今回はあくまで「中間報告」なのでページ数は30ページに過ぎない。それでも随分お腹いっぱいの中身なのである。

 最終報告は年内を予定しているという。さて完結編はどんな「超大作」になるのやら。

(猫間滋)

「*」は編註

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