損保・信販会社も離れたビッグモーター「取引銀行団」が握る破綻トリガー

 ビッグモーター問題では、自らも半ば渦中にある損保ジャパンが早々に保険代理店の委託契約を終了。すると今度は信販会社のジャックスが、ビッグモーターの自動車ローンの新規受付を停止、中古車検索サイトの「グーネット」がビッグモーター案件の情報掲載を取り止めと、取引先がどんどん離れて、いよいよビッグモーター社内の問題では済まされず、企業の社会的信用問題にまで発展してきている。

「このほか損保では、東京海上日動も契約終了へ向けて協議中とされていますが、東京海上HDの永野毅会長は、7月段階で『報道されている以上の事は分からない』としつつも、『ビジネスの常識を超えている』と批判しているので、いつ解約になってもおかしくないでしょう。また信販会社ではオリエントコーポレーションでも新規受付を停止する可能性が言われていて、特に横並び体質の日本では、雪崩を打ったように他社も距離を置き始めることは想像に難くありません」(経済ジャーナリスト)

 ビッグモーターは経営者を刷新、社内調査を行うなどして再生の道を探ってはいるものの、社会的信用というのは一度失ったらそうそう簡単に戻って来ないもの。有名な例としては、00年に集団食中毒が発生、社長が「寝てないんですよ!」とマスコミに逆ギレした雪印の一件が語り継がれるが、同社の場合は02年にも偽装牛肉問題が発覚して、スノーブランドは地に堕ちたと言われ、結果、雪印食品は廃業。関連会社も複数売却せざるを得なかった。

「損保会社に関しては、共に不正請求の被害者救済に取り組むべきとの声がありますが、それと新規を取り扱うかはまた別の話です。取引先企業が離れる以前に、顧客離れはどうしようもないですからね。そこで最後のトリガーが引かれるかどうかは、銀行の動向にかかってきますが、報道では8月中旬に“銀行団”との話し合いが持たれる予定とされています。さてその結果がどうなるか」(同)

 ビッグモーターの主要取引銀行は、3大メガバンクと創業の地に近い広島銀行や中国銀行だ。新社長の和泉伸二氏はさっそく各行にお詫び行脚に回ったというが、これだけ不正のデパートだった企業に銀行はどんな対応をするのか。

 8月中旬のこの話し合いにビッグモーターの生殺与奪が大きくかかっているわけだが、ともすれば早くもビッグモーターの受け皿はどこにするかについての算段がされているやもしれない。
 
(猫間滋)

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