なによりも、最大の問題は「中国の人権問題」だ。
中国の人権問題など、東京都の住宅の太陽光パネルと何の関係があるのか、と思う方もいるかもしれない。実は日本が輸入する太陽光パネルの8割は中国製というのが実態である。
2012年の改正FIT法(再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る制度)の施行までは、太陽光パネルは日本が世界をリードしてきた。1㌔ワット当たり40円という世界的にも破格の高い売電価格が設定された結果、日本のそこかしこに太陽光発電所が建設され、太陽光パネルが並べられた。
都内在住の方でも観光地を訪れた際、山肌を太陽光パネルが覆い尽くす光景を目にしたことがあるのではないだろうか。
その結果、安価な太陽光パネルが求められ、京セラやシャープ、三洋電機(現パナソニック)といった日本の太陽電池メーカーは市場から駆逐されてしまった。
太陽光発電設備を個人に売り出す会社とて、わざわざ赤の他人のために高価格で高性能の太陽光パネルを並べるお人好しなどいるはずもなく、そうこうする間に人件費が安い中国製は瞬く間に世界中の太陽光パネル市場を席捲していったのである。
しかし、中国製パネルの「安さの秘密」にはとんでもない闇が隠されていたのだ。
2018年1月、米トランプ政権は中国製の太陽光パネルに30%の追加関税を課す緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。トランプ政権は太陽光パネルが新疆ウイグル自治区で製造され、深刻な人権侵害が起きている、と中国を非難していた。
民主党のバイデン政権に代わっても、制裁措置は強まる一方だ。
実は、中国製パネルのほとんどは新疆ウイグル自治区で造られており(世界シェアの45%が新疆ウイグル自治区で占められている)、国連難民高等弁務官事務 所(UNHCR)も米国同様に新疆ウイグル自治区での中国のウイグル人に対する人権侵害を指摘している。
もっと端的に言えば、アメリカや国連は、中国製太陽光パネルの安さの秘密は、強制収容所におけるウイグル人のタダ働きによって支えられている、と疑っているのだ。
さらに付言すれば、こうした太陽光パネルは、新疆ウイグル地区から豊富に産出される石炭を使った電力によって製造されているという指摘もある。
つまり、太陽光発電とはSDGsを隠れ蓑にした〝悪の巣窟〟といっても言いすぎではないのだ。
自然エネルギー系の左派は「アメリカ・オバマ政権は2050年までにCO2排出量を80%削減すると言っている。日本は乗り遅れている」と散々煽り立てた。
だが、現実は価格競争となり、恩恵を被ったのは、専制主義国家の筆頭ともいえる中国ただ1国だけだったということは肝に銘じておくべきではないのか。
アメリカの高関税、人権侵害に対する批判のために行き場を失った安価な中国製パネルは、小池都政が進めた言わば、降って湧いたような「中国産パネルバブル」に踊ろうとしているのである。
三枝玄太郎(ジャーナリスト)1991(平成3)年、産経新聞社入社。社会部などで警視庁担当、国税庁担当、東北総局次長などを歴任。 2019(令和元)年退社。以後はフリーライター。主な著書に「19歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件」(角川書店)、「SDGsの不都合な真実」(共著/宝島社)など。文化人放送局で水曜日レギュラー、「Xファイル 未解決事件」に出演。YouTube「三枝玄太郎チャンネル」を配信中。