小池百合子に惑わされるな!「太陽光発電」の闇(2)毎年80万トンの有害廃棄物が…

 まず第1に、多くの住宅に太陽光発電設備が導入されることによるゴミ処理の問題が挙げられる。

 東京都環境局は、対象家屋は新築戸数の半数を見込んでいるとしているので、約1万3000戸の半数、約7000戸程度が対象になると思われる。

「2030年問題」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 太陽光パネルの耐用年数は20~30年程度だ。2038年には実に80万トンもの太陽光パネルが廃棄されることが見込まれている。

 しかも2038年以降は毎年80万トンの廃棄物が続々と出されることになる。その上、パネルには鉛やヒ素、セレン、カドミウムといった人体に有害な物質が含まれており、大型の管理型廃棄物処分場が大量に必要になるだろう。しかし、産廃処分場を作るとはいっても、迷惑施設の王様格の施設であるだけに簡単には増設できないことは自明の理であろう。

 すでに野立て式の太陽光発電施設では不法投棄の恐れが囁かれている。2019年に経済産業省がまとめたデータによると、こうした太陽光発電所を設置した業者の実に84%が「廃棄費用の積み立ては考えていない」と答えているのである。業を煮やした経産省は2022年7月から法改正し、売電費用から廃棄費用にかかる分を強制的に徴収することになった。

 ただ、この積立制度の対象は積載量10キロワット以上なので、5キロワット程度の住宅用太陽光パネルは対象外となるのだ。売電収入から一定額を引かれる恐れがないため、心理的な抵抗は少ないかもしれないが、20年程度経過した我が家の太陽光パネルが耐用年数を超えて、廃棄しなければならなくなったとき、さて、廃棄費用はどれくらいかかるだろうか。

 撤去費用と運搬、処理費用でしめて15万円ほどかかるが、10年間で売電で得られた収入を約60万円と試算して(東京電力のHPより試算)、120万円の売電収入から15万円程度は必要になるということは考えておかなければならない。また電気代は屋根にパネルを載せてもタダになるわけではない。そもそも売電収入は手元に残らないわけだから、感覚としては突然、15万円ほど余計な出費が産廃業者に徴収される、という感覚になるのが実態となるはずだ。

「だったらそこら辺の山に棄ててしまえばいいではないか」と破れかぶれになってはいけない。廃棄物処理法の不法投棄の罪は重い。5年以下の懲役または1000万円以下の罰金だ。さすがに末端消費者を刑務所にぶち込むような判決は出ないと思うが、それなりの罰金は覚悟した方がいいだろう。

 ほかにも問題点がある。サイバー攻撃に対するセキュリティの確保に不安があるのだ。

 想定されているのは、太陽光発電の発電量が非常に大きくなったタイミングで、一斉にパワーコンディショナーのセキュリティホールに攻撃を仕掛けられ、発電を遮断されてしまえば、広域大停電が起こる可能性もある。通信業界には、日本のエネルギー業界のセキュリティは通信より20年遅れている、という指摘もある。

 小池都知事の思いつきだけで、一朝一夕に成就する事業でないことだけは確かなのだ。

三枝玄太郎(ジャーナリスト)1991(平成3)年、産経新聞社入社。社会部などで警視庁担当、国税庁担当、東北総局次長などを歴任。 2019(令和元)年退社。以後はフリーライター。主な著書に「19歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件」(角川書店)、「SDGsの不都合な真実」(共著/宝島社)など。文化人放送局で水曜日レギュラー、「Xファイル 未解決事件」に出演。YouTube「三枝玄太郎チャンネル」を配信中。

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