これはもはや「地球の悲鳴」としか言いようがない。
世界気象機関(WMO)が17日、年次報告書を発表。地球の気温が今後、記録的水準まで急上昇する見込みを伝えた。温室効果ガスとエルニーニョ現象により、以後5年間のうち少なくとも1年間の気温が過去最高を更新する可能性が98%、また5年間全体の気温も過去最高になる可能性が98%に上る。
「2015年のパリ協定を通じて国際社会は、地球気温上昇幅を産業革命以前に比べて1.5度に抑えることに合意しました。これまでの研究で1.5度を超えると大規模な洪水や干ばつ、山火事、食料不足などが発生する確率が格段に高くなるという結果があり、レッドラインを1.5度としたという経緯があります。ところが世界の国々では相変わらず石炭や石油、ガスなどの化石燃料を燃焼させ、温室効果ガスの排出が続いており、世界気温はすでに1.2度上昇。さらにエルニーニョ現象が加わって、気温上昇に歯止めがかからない状態です」(サイエンスライター)
その証拠に、すでにアジアや北米諸国では記録的な猛暑日が発生している。
「日本では5月に入り、各地で30℃超えの猛暑を記録しましたが、シンガポールでも今月13日の最高気温が37度まで上昇。5月基準では史上最高気温を記録しました。また、ベトナムでは今月初め、史上最高気温を塗り替える44.1度を記録。ミャンマーも先月末、中南部で58年ぶりとなる43度を記録しています」(同)
さらにタイ北西部のタク地域では、先月14日になんと最高気温45.4度を観測。体感温度は50度を優に超えていたという。
気温上昇は東南アジアのみならず世界的に見ても顕著に現れており、3月は1850年以来史上2番目に暑く、4月は史上4番目に暑かった月として記録されている。
「夏になれば、当然エアコン需要が急増するはずです。特にインドや中国、インドネシアなどの人口密集国では、所得の伸びと並行して気温が急上昇している傾向があるため、エアコン稼働の急拡大が、さらなる温暖化につながっています。しかも、そのエアコンを稼働させるための電気も、化石燃料で生産する国が圧倒的に多い。つまり、危険な高温から身を守るためにエアコンを使い、さらに異常気象を作り出すという矛盾も生まれているのです」(同)
地球環境をこれ以上破壊しないために、先進国・途上国それぞれの立場で、即時に対応する必要に迫られている。戦争などしている暇はないのだ。
(灯倫太郎)