提供開始から5年とかからずユーザー数が10億人を突破した動画アプリ「TikTok」。ソーシャルメディアとしてはインスタグラムやフェイスブックなどを上回るスピードで急成長を遂げたが、開発メーカーの「ByteDance」が中国企業であることから欧米各国では段階的な禁止化への動きを見せている。
米国では1日、大統領権限で一般の利用を全面的に禁止できる法案を下院外交委員会で可決。成立には上院での審議・可決が必要だが、一足早く先月27日には、米政府機関が所有する公用端末からTikTokのアプリを削除するよう通達している。
ちなみに同日、カナダでも政府機関のPCなどからのアクセスを禁止すると発表。これに先立って台湾では昨年12月、EUも先月23日に同様の措置に踏み切っており、インドに至っては20年6月とかなり早い時期から民間でも禁止に。実は、米国でもほぼ同時期に当時のトランプ政権がTikTokの利用禁止を検討していたという。
「ティックトッカーたちからは『行きすぎ』と批判の声も上がっているが、ここまでするのは組織的な情報漏洩があると判断されたから。開発したのが中国企業である以上、中国政府に情報提供を求められれば彼らに断ることはできません。現に海外に向けて運用を始めた17年の段階ですでにそうした目的があったとの報道もある。各国政府も禁止の理由に〝サイバーセキュリティー上の脅威からの保護〟を掲げ、信憑性の高さがうかがえます」(ITジャーナリスト)
では、翻って日本はどうか。政府はマイナンバーカードのPRにTikTokを活用し、各自治体も情報発信に利用するなど世界的な規制の流れに逆行しているのが実情だ。
松野博一官房長官は会見で「公用端末では、TikTokを含むSNSの利用を禁じている」とコメント。そのうえで「要機密情報を取り扱う場合は、基準によりTikTokを始めとするSNSなど外部サービスを利用することはできない」と語るに留まっている。
「機密にかかわる情報をSNSで扱うのが原則禁止なのは他国も同じ。そのうえでTikTokに対しては名指しで禁止を発表しています。一般に普及している欧米では、インドのように全面禁止化するのは難しいと言われますが、一連の流れを見るとその可能性も低くはありません。特定サイトへのアクセス遮断は世界中の国で行われており、技術的にも難しくない。ユーザーの多い日本でも、情報漏洩がはっきりすれば、世界に追随する形でTikTokの全面禁止化もありえない話ではないでしょう」(前出・ジャーナリスト)
少なくとも本気で締め出しにかかっている国が多いのは事実のようだ。