「迷惑動画」と何ら変わらない!「昆虫食」デマ拡散の愚

 世界人口の増加により、2050年にはタンパク質の供給量が足りなくなる「プロテインクライシス」が起こるとされ、新たなタンパク源としてコオロギやイナゴなど昆虫食に注目が集まっている。しかし今、SNS上では昆虫食に対する是非の議論が過熱し、多くのデマや陰謀論まで拡散している。

「SNS上で昆虫食の賛否が盛り上がり始めたのは2月中旬からで、徳島県内の高校でコオロギパウダーを使用したかぼちゃコロッケなどが給食で出されたことが大きな話題となり、《子どもたちに無理やり虫を食べさせるな》といった批判の声が相次ぎました。それと同時期にツイッターでは『コオロギ事業に補助金が出ていて、6兆円以上の血税が使われている』といったまったく事実無根のデマ情報が拡散し、昆虫食否定派の声が大きくなっていったのです」(社会部記者)

 議論が過熱するにつれて企業に対するデマも急増。Pascoで知られる製パン大手の「敷島製パン」はコオロギパウダーを配合した「Korogi Cafe(コオロギカフェ)」シリーズを展開しているが、《生産ラインでコオロギ入りも作っている》《商品のパッケージにコオロギ粉入りと明記していない》といったウソの情報が広がり、同社はPascoの公式サイトに同シリーズに対する誤った知識を正す情報を掲載している。

 また、「オランダせんべい」などを販売する酒田米菓には、SNS上に拡散している「昆虫食を推している日本企業&研究機関MAP」の中に同社の名前があったことから、《せんべいにコオロギの粉末を入れている》という根も葉もない情報が拡散。公式ホームページにリリースを掲出して、コオロギパウダーはすべての商品を対象に一切使用していないこと、商品化の予定もないことを説明している。

「昆虫食に反対するのは自由ですが、自分の意見を押し通すためにデマを拡散させるのはさすがに問題がある。その情報を信じて、クレームの電話をかけたり、不買を呼びかけたりする人も現れ、企業としても強い対抗措置を取らざるを得ない状況になりかねません。そもそも、コオロギパウダーを商品に使用している場合は必ず原材料の中に表示しなければならず、『こっそり入れている』などといった情報を見ても信じてはいけません」(フリージャーナリスト)

 デマを拡散させて企業イメージを傷つける行為は、回転寿司店の迷惑動画行為と何ら変わりはない。

(小林洋三)

ライフ