「気球」以上に中国国民が懸念!人民解放軍で起こっている「ヤバい事態」とは?

 米国での撃墜をきっかけに世界各地で巻き起こっている「偵察気球」騒動。日本の防衛省も14日、九州と東北で確認された3件の飛行物体は「中国の無人偵察用気球だと強く推定される」と発表。翌15日には中国外務省が、米国の主張に追随しないよう日本を牽制したが、この問題がさらに広がりを見せることは間違いないだろう。

 偵察気球問題で緊張が高まっている米中だが、実は中国国内では、気球問題以上に国民の関心を集めているニュースがある。それが、人民解放軍から除隊した20代男性を巡る問題だという。

「中国には『兵役法』という徴兵制があるのですが、基本、志願者のみで新兵枠が埋まっていたため、実質、兵役を強制することはしていません。ただし、入隊すれば2年間は病気など特段の理由がなければ除隊できないことになっている。ところが、今回問題になっている男性は志願して入隊したものの、軍隊生活になじめないとの理由で、軍幹部の説得を無視して除隊。結果、3万4584元(約67万円)の罰金と、戸籍簿への『兵役拒否』記載、国有企業職員や公務員として採用禁止、さらに2年間は海外への出国、進学禁止ほか、ローンが利用できないなど9項目に渡る罰則が科されました。それがこれ以上、除隊者を出さないための見せしめだとして話題になっているんです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 かつて人民解放軍は、貧しい農村の出身者らに雇用を提供する場だったとされるが、世界第2位の経済大国となった今、「00後」(2000年代生まれ)以降の優秀な新兵確保が国をあげた最大の課題になっているといわれる。

「一人っ子政策が取られて久しい中国では、人民解放軍の兵士の7割が一人っ子という世界でもまれな軍事組織。歴史的に見ても戦争というのは、いわゆる跡継ぎ以外の男子が担ってきたもので、なぜなら長男の戦死はすなわちその家系の終わりを意味するからです。特に中国では家系の継続が重要になるため、ここ数年、人民解放軍への入隊希望者が減少傾向にありました。しかも入隊してくるのは、親に甘やかされてきた一人っ子ですから、組織の中に入っても協調性を保てない場合が多く、軍隊の厳しさにも耐えられない。それが今、中国人民解放軍が抱える最大の弱点だと言われています」(同)

 報道によれば、ある都市で徴兵検査したところ、なんと56.9%が不合格だったというケースもあった。

「親のスネをかじって怠惰な生活を送り、夜な夜なパソコンやゲーム三昧で昼夜逆転。おまけに食事は偏食で炭酸飲料ばかり飲み‥‥そんな生活を送ってきた若者に厳しい軍隊生活が務まるはずもありません。ただ現実は、有事の際には彼らが戦地に赴くわけですからね。実際の戦争で規律を保てるのか、疑問視する軍事専門家は少なくないのです」(同)

 若者の除隊をめぐり、浮かび上がった中国人民解放軍の大きな弱点。米国も今後の行方を注視しているに違いない。

(灯倫太郎)

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