以前、掲載したリアル実体験レポート「シニア再就職のリアル」は大きな反響を呼んだ。不安定な時代を反映してか、アンコールの声も届く。改めて、不屈男たちの金言をダイジェストでお届けしようではないか。
再就職という人生の新たな道を切り開くきっかけは千差万別、人それぞれである。元ライターの蔵元道夫さん(75)=仮名=は、年金以外の収入を求めてマンション清掃員になった。
「2時間半の労働で月7万円だけど、手抜きはし放題で楽だよ」
50代で始めたドラマのエキストラという仕事が縁となってアダルト業界入り。75歳の今も現役バリバリのシルバー艶系男優という山田裕二氏は珍しいケースだろう。
「ギャラは昔から変わらず1本3万〜5万円。波はありますが、月収30万円前後といったところでしょう」
推理作家・夏樹久視氏の場合は、80代なかばの実母が認知症を発症してヘルパーに任せたことがきっかけだった。老々介護が社会問題となる中、こちらも他人事では済まされないと、介護ヘルパーの道に挑んだ。前者の2例とは異なり、資格を要する。
「介護の短期集中講座に1カ月通って、ヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取りました。1日6時間の授業で入学金・授業料で8万円くらいでしたが、学費を納めに行くと教科書、実習の教材費なども含め10万円近くかかりました。車イスでの移乗の実習では、28歳の若奥様と抱き合い、吐息を感じるようなこともあった」(夏樹氏)
タクシードライバーも普通二種免許を取得しなければならない。ライターを兼業する後藤豊氏が言う。
「約20万円かかる費用は会社が負担してくれます。2年間勤めれば、その費用を返済せずに済むんです。教習期間、1日7000円の日当も会社が支払ってくれました」
どんな仕事にも苦労はつきものだ。警備員として大型ショッピングモールに派遣されたのは松坂幸雄さん(67)=仮名=。24時間勤務のうち、3時間の休憩と5時間の仮眠タイムは設けられているが、
「営業中は所定の場所で立哨してお客様をお出迎えしたり、巡回しながら落とし物、不審者の警戒にあたります。急病人の対応にあたることもあれば、駐輪場で自転車を整理することも。そしてショッピングモールの営業が終わる頃には、従業員や出入り業者の退社・退館の対応に追われ、深夜には無人の店内を巡回。早朝には出勤してくるショップの従業員を出迎えます」
と、多忙を極める。
もっとも、警備員は職場環境によって労働格差が激しいようである。都内のオフィスビルに1名体制で常駐する、岡本慎吾さん(70)=仮名=が明かす。
「平日は夕方スタートですが、土日祝は朝8時から翌朝8時までの勤務で、実際に働いているのはたった2時間。その大半を占めるのが5回義務づけられている巡回ですが、5階建の小規模なビルなので、巡回は20分くらいで終わりますよ」
その大半を警備室で過ごすと言い、お得感が漂う。同様にビル設備管理人もシニアの再就職に持ってこいのようだ。主な業務内容はやはり3時間おきの巡回。勤務歴8年の藤田大和さん(69)=仮名=が説明する。
「商業ビルや官公庁舎内の1室が職場。エアコンのある室内で夏の暑さや冬の寒さに苦労することはない。電気設備、空調設備、給排水設備なんかの点検をして回るだけで、押しなべて体力を求められる場面も少ないのが老体向きだよ」
*週刊アサヒ芸能2月16日号掲載