シニア再就職のリアル(6)職業別裏カラクリ「ゴミ収集パッカー車で巻き込み事故が多発」

 ワケあって東京を離れ、某県に帰郷した青山拓郎さん(58)=仮名=。新たな仕事にも就かなければいけなくなり、知人に紹介されたのが民間のゴミ収集業者だった。毎日、オフィスや飲食店から出されるゴミを集めて回る現場の生々しい実態を聞いた。

「一般家庭のゴミは、例えば燃えるゴミが週2回とか決まってるわな。そっちの収集は役所の仕事。飲食店なんかの生ゴミは毎日大量に出るわけや。365日稼働して、毎日回収するのがこっちの仕事ってわけ。俺は田舎の相場だから時給800円台だけど、都会だったら日給1万円超えはザラで、月30万円近くは稼げる高収入バイトだわ」

 仕事の工程を説明すると朝8時に会社集合。作業員は老人が多く、1日17〜18人が出社してくるという。

「その後は、1人ずつ担当エリアに散っていくわけや。役所の収集は運転手と積み込みの作業員がいるけど、こっちは全部1人でやる。燃えるゴミの担当はパッカー車、瓶や缶なんかの不燃ゴミ担当は別のトラックにそれぞれ乗り込んでな。契約している飲食店、オフィスを回っては、降りて淡々とゴミを積み込み続けるわけや」

 10時になったら30分休憩、昼12時まで働いたら1時間の昼食タイム。13時から15時まで働き、また30分の休憩を挟んで再び17時まで収集を続ける。最後にゴミ回収の拠点となる敷地まで運び、会社で臭いのついた車を清掃して終了となる。

 青山さんは週6日勤務している。免許さえあれば、特に資格は必要のない仕事。誰でも簡単に始められそうだが、最初の研修に1カ月を要するという。

「昔は、3日から1週間程度で研修終了だったって聞いとる。でも事故ばっか起こるから長い研修をやらざるをえなくなったってな」

「事故」の多くはパッカー車での作業中、後部でゴミを潰すために回っている鉄板への巻き込み事故だ。

「腕が巻き込まれて、片腕が取れちゃうなんてしょっちゅうだと思うわ。全国で2週に1度くらいはあるんちゃうか。横着してヒザ付いて作業してたら、ゴミと一緒に巻き込まれてヒザから下を失ったとかな。頭突っ込んだ死亡事故もあったって聞いとるわ。燃えるゴミにスプレー缶が混ざっとって、爆発起こすなんてこともあるからな。けっこう命かけてるんよ」

 単純作業のようで、安全に進行するには細心の注意が求められるのだ。

 そればかりか、飲食店を回る際の〝おぞましい体験〟も試練だという。

「飲食店の裏に回ると鍵のかかったゴミ捨て場があるよな。店は前日の22時ぐらいまで営業してて、ゴミを捨てたら翌朝の収集が来るまで放置されてる状況や。朝、作業員が来て電気をつけたら、生ゴミの下からゴキブリが散っていくんよ。冬はいいけど夏場は200匹ぐらいと遭遇したヤツもおる。ネズミも出るし、ウジが湧いてることも‥‥」

 金を稼ぐのに、苦難はつきもの。それでも覚悟が決まったら、参考にしてみては‥‥。

*週刊アサヒ芸能2月16日号掲載

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