シニア再就職のリアル(1)「バイト人生50年」俳優が見た壮絶現場「1体1万円でホルマリンの臭いが染みついて」

 役者を志し演劇部に入った高校時代、ファミレスの店員を皮切りにバイト人生50年! 20代なかばにはホームレス生活も1年半経験している芸人兼俳優のジジ・ぶぅ氏(66)が、職を求めるシニアたちに貴重な「多業種体験談」を贈る。

 今から50年前はラーメン1杯200円の時代で、ファミレスのバイトは時給200円でした。3年やって大学に入ったら、今度は肉まん工場。ランダムに肉まんを計量して80グラムでプラマイ1グラムならOKって仕事です。1時間に1度の休憩で肉まん食べ放題。24時から朝8時で、深夜手当が付いて日給7000円だった。前職と比べたら「寝る時間ももったいない」って、深夜バイトに目覚めちゃいました(笑)。

 続いて、友達に「いいバイトがある」って紹介されたのが「マンション購入の順番待ち」。当たったら購入できる抽選の順番を確保するため、雇い主の代わりにマンションの1室でひたすら1週間待ち続けるんです。1日に何回か点呼があって、その時間帯に不在だと抽選権を失うために代わりを立てているわけですが、こちらも点呼の時にそこにいればいい。大抵はマンションを買いたいような金持ちからの依頼ですから、いい差し入れもあったし、日給2万円と稼げましたね。

--大学時代も様々なバイトにトライし続けたぶぅ氏だが、続いて登場するのは巷間、都市伝説として語られることもある遺体清掃員である。

 交通事故などで亡くなった方の体を1体1万円できれいに洗うんですよ。70年代当時はまだ、ベトナム戦争で亡くなった兵士の遺体も運び込まれてきていて、次から次へでした。だからバイトも男女問わずたくさんいて、イメージとは違って賑やかな職場でしたね。

 某医大の地下室に行くと、ホルマリンの入ったプールがあって、同時に5人が作業をしたら満杯になるぐらいの広さ。ブルーシートにくるまれた遺体を台車でそこに運び込んで、プラスチックのたわしで傷口にある血の塊を剥がして洗浄するんです。

 遺体って、穴という穴から突然にボッボッとガスが出てくることがあって、それは怖かったですが、目は閉じているので作業は続けられましたね。若い女性の遺体ももちろんありましたけど、何も感じませんよ。

 ちなみに、私は当たらなかったのですが、兵士の遺体は腕がもげていたり、頭がなかったりで、担当した先輩もさすがに「気持ち悪くなってきた」ってゲンナリしてました。

 1体洗うのに40〜50分。1日5体ぐらい洗いますが、ホルマリンの臭いが染みつくんです。3〜4日目に家族から嫌がられて辞めましたがね。

*週刊アサヒ芸能2月16日号掲載

マネー