プーチン大統領は、ロシア正教のクリスマスに当たる7日から停戦に入ると一方的に主張したが、その後もロシア軍による攻撃が繰り返された。また、ロシア国防相は停戦終了後にウクライナ東部を攻撃し、600人以上を殺害したと発表したが、ウクライナ側はこれを否定している。
そんな中、ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は8日、崖っぷちにあるプーチン政権が今後、朝鮮戦争の休戦協定により朝鮮半島を南北に分断した、いわゆる「38度線」的な休戦のシナリオを検討している可能性があるとする談話を発表。その信憑性に注目が集まっている。
朝鮮半島問題に詳しいジャーナリストが説明する。
「周知のように『38度線』は、韓国と北朝鮮を分かつ軍事境界線で、朝鮮半島のほぼ中央を東西に通る全長約248kmに渡る非武装地帯のこと。これは朝鮮戦争から3年を経た1953年7月に休戦協定が交わされた際、韓国とアメリカを中心とした『南』(国連軍)と北朝鮮と中国の『北』の最前線を非武装地帯とし、このエリアを『国境』ではなく『休戦ライン』と定めました。なので南北朝鮮はあくまでも休戦状態であり、朝鮮戦争は“継続中”であることを意味しています」
非武装地帯は韓国と北朝鮮だけでなく、ほかにも東地中海のキプロス島、イスラエルとシリア、イラクとクウェートの間にも「停戦ライン」などの名称で存在するが、ダニロフ氏はプーチン大統領が、ウクライナとの間に同様の「停戦ライン」を引くことを検討している可能性があるというのである。
「報道によればダニロフ氏は、ロシア側がコザク大統領府副長官を窓口に水面下でウクライナと外交を進めていると指摘しています。プーチン政権が、朝鮮半島の南北分断が固定化された経緯を念頭に、『停戦に持ち込むためさまざまな譲歩の用意がある、といったメッセージをウクライナに伝えようとしている』というのです。ただ、ウクライナとしては奪い取られた場所を奪い返すという強い意思がありますから、簡単に停戦合意とはなかなかならないでしょう」(全国紙記者)
戦争が始まって来月で1年。ウクライナ国防省は「春にかけて大規模攻撃を計画している」と発表し、一方のロシアもミサイルの枯渇が指摘される中、天然資源を元にブラックマーケットから入ってくる資金によって兵器確保に躍起になっているとされる。双方一歩も引かない流れだが、はたして停戦合意は実現できるのか。
(灯倫太郎)