アメリカでは、有権者の44%が「連邦政府は秘密結社が掌握している」と回答したという調査結果が伝えられたのは11月のことだ。秘密結社という言葉は、アメリカ極右の陰謀論集団であるQアノンが使っているので、Qアノン的な陰謀論がアメリカでは相当広がっているということだ。
そうなると何が本当で何がフェイクなのか分かりにくくなる。そこでイーロン・マスクはツイッターで「ツイッター文書」というものを公開。彼がCEOになる以前のツイッターの言論規制がどうであったか追求する行動に出た。
コトは2020年10月に遡る。
「当時、ニューヨーク・ポストがバイデン現大統領の息子がウクライナで父親の立場を利用して仕事をしているという事実を報じました。そして同紙はホワイトハウス勤務の経験があるCIA職員の内部告発文書を紹介。それによると、バイデンがオバマ大統領時代に副大統領を務めていた際、ウクライナに圧力をかけて同国内の電力会社から報酬を受け取るように仕向けたといいます。そしてトランプが大統領再選を果たすため、これをバイデン攻撃の材料しようと企図して、情報を引き出すために軍事支援を餌に使っていたというのが記事に書かれた話の大筋です。いわゆる『ウクライナ・ゲート』問題と言われるものですが、この問題をツイッターはどう扱ったかを示すのが『ツイッター文書』というわけです」(週刊誌記者)
「ツイッター文書」は、マット・タイービというジャーナリストが入手したツイッターの内部文書を晒す形で12月2日に掲載された。このスレッドにマスクはリツイートを行っているので、おそらくはマスクのお膳立てだと思われる。
「タイービが言うところによれば、ニューヨーク・ポスト紙の報道があった時、この記事をツイッター上で共有するのは『潜在的に有害』というフラグを立てることで、記事が共有・拡散されないように言論の自己規制が行われたとのこと。理由は記事がロシア側がハッキングして得た情報を元にして書かれた可能性が高いからということらしいのですが、CEOのジャック・ドーシーは記事の共有をブロックすることは許されないと発言していたことから、何かしらの理由によってツイッターの内部統制がバイデンに不都合な真実が世の中に広まらないよう、民主党左派寄りに傾いていたとしているのです」(同)
またタイービはツイッター社がロビー活動費として民主党に1億3000万円の金を投じていたのに対し、共和党には190万円しか使っていなかったことも明らかにしている。そして今後は、アカウントが理由不明なまま凍結されてしまう、いわゆる「シャドウ・バン」の裏側についても明らかにしていくとしている。
アメリカでは、報道機関によって民主党寄りと共和党寄りがかなり明確に分かれていることで知られる。だから一般人はメディア・リテラシーを働かせて、そこを差っ引いて報道を受け取る必要がある。熱心な共和党支持者のマスクがCEOになったツイッターでこういったことが行われれば、本当のことを明かすと語っていること自体が陰謀論めいて聞こえてしまう。
やたらに陰謀論が蔓延して、よけいに何が本当なのかよく分からなくなってしまうというのが実際のところだ。
(猫間滋)