2021年のクーデター以降、国軍と少数民族武装組織との間で、連日激しい衝突が起きているミャンマーで23日、なんと祝賀式典のコンサート会場へ国軍が空爆。会場にいた観客や歌手、兵士ら150人以上が死傷するという残虐行為が行われていたことがわかった。
「報道によれば、空爆されたのは少数民族武装勢力『カチン独立機構』(KIO)が実効支配する北部カチン州カンシ村。コンサートは、KIOの軍事部門である『カチン独立軍』(KIA)の自治権獲得活動62周年を記念するものだったそうですが、この会場を目がけて同日夜8時半ごろ、国軍が航空機から爆弾3発を投下したとみられています」(国際部記者)
BBCの取材に応じたKIA広報担当者によれば、24日現在判明している死者は60人、負傷者は約100人。観客、兵士のほか、当日ステージに立っていた歌手も含まれているという。
「ミャンマーは1948年に英国の植民地支配から独立し誕生しましたが、そもそも文化や民族、言語が異なる、いわば『寄せ集め国家』。そんな背景もあり、国境沿いを中心に国土の約3分の1が、ワ州連合軍(UWSA)、カレン民族同盟(KNU)、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)など、20余りの武装勢力によって支配され、その中の1つが今回空爆されたKIOでした。特に、カンシ村には、年間300億ドル(約4兆4400億円)を生み出すとされるヒスイ鉱山があり、長年、国軍とカチン族武装勢力との間で激しい闘いが繰り広げられてきましたが、いくらなんでも民間人も集うコンサート中に爆弾を落とすとは‥‥正気の沙汰とは思えません」(同)
ミャンマーでは2015年以降、10の武装勢力が政府との停戦合意に署名したが、北部カチン州やシャン州など一部地域では、変わらず激しい戦闘が続き、民間人が「武装勢力の盾」となって巻き込まれるケースが後を絶たないとされる。
「9月にも、国軍が北西部ザガイン地域の学校を攻撃、14人が殺害されるという痛ましい事件が起きたばかりで、この時の死者は14人中、12人が子供で最年少は7歳だったそうです。しかも、地元メディアの取材に答えた教員によれば、校庭に攻撃用ヘリが飛来したかと思うと、外で遊んでいる子供がいるにもかかわらず、国軍がマシンガンや重火器などで攻撃を始めたといいます。それが事実なら、ロシアによるウクライナ侵攻以上の惨劇と言っても過言ではない。国連や欧州連合はじめ、さまざなま人権団体が非難声明を出していますが、今もなお、複数の村が焼き払わるなど、民間人が盾となる国軍対反政府勢力との激しい闘いが続いています」(同)
19日には、ミャンマー最大都市ヤンゴンでも2個の爆弾が爆発、8人が死亡し18人が負傷するという事件があったが、標的となったインセイン刑務所は、反軍事政権デモを撮影中に拘束された日本人映像作家・久保田徹氏が収監されている場所だ。
「軍の広報担当者は、死者には刑務所職員3人と10歳の少女が含まれており、『犯行はテロリストによるもの』と主張していますが、一部には『混乱に乗じて拘留された仲間を救い出すため刑務所を狙ったのでは』との見方もあることから、刑務所周辺では緊張が高まっているそうです」(同)
久保田氏は今年7月、ヤンゴンで国軍への抗議デモを撮影中に拘束され、電子通信に関する罪と扇動罪で禁錮7年、入管法違反の罪で禁錮3年と、あわせて10年の刑期を言い渡され同刑務所に服役中。日本大使館は「引き続き早期の解放を求めていく」というが、今こそ岸田政権の「外交力」に期待したい。
(灯倫太郎)