3月に行われたフィギュアスケート世界選手権の男子シングルで、宇野昌磨を抑え、羽生結弦に次ぐ3位の成績を収め、1位のネイサン・チェンと23年ぶりにアメリカ人選手のW表彰台を実現したヴィンセント・ジョウ。GPシリーズこそ表彰台を逃したものの、全米選手権では2位、四大陸選手権でも3位と好成績を収めるアメリカのトップ選手だ。そんなジョウ選手が練習の拠点を変えるという。
「ジョウ選手が選んだのは、なんと紀平梨花、宮原知子を育てる濱田美栄コーチ。当初は短期の合宿的に指導を受けるのかと見られていたのですが、宮原と同様、木下グループに所属してサポートを受けて、前から指導を受けているトム・ザカライセックコーチとの関係性はそのままに、日本を拠点に濱田組でその技術を磨くというのです」(スポーツライター)
羽生しかり、エフゲニア・メドベージェワしかり、海外に拠点を移して指導を受けることは珍しいことではない。しかし、日本のコーチに師事するため、海外の選手が日本に拠点を移すということは異例なのだ。
「フィギュアスケートは欧米のスポーツであり、今でこそ日本はフィギュアの強豪国の1つですが、その始まりは後進国もいいところ。全くレベルが違いました。浅田真央を指導した佐藤信夫コーチをはじめ、先人たちは海外の試合に行って外国人選手の演技を自分たちで録画し、その映像を分析して学んだというほど、日本はフィギュアスケートの技術で後れをとっていたんです。そんな日本に、優秀なコーチもいるアメリカから指導を受けに来ることは、フィギュアスケート界でエポックメイキングとも言える出来事なんです」(前出・スポーツライター)
数々の日本人選手が流した汗と涙が、こうして世界から日本へ、日本のコーチに学びにくる選手が現れるまでの「フィギュア大国」を作り上げたと言えるだろう。
新たなシーズンは日本人選手だけではなく、日本で日本人コーチに学んだジョウ選手にも注目だ。
(芝公子)