では、今年下半期以降、米国株への投資は控えるべきなのか。この点について経済評論家の佐藤治彦氏は次のように解説する。
「米国の株価が下がっている最大の理由は、バイデン大統領が11月の中間選挙で勝つためにインフレ退治を第一に考えているからです。インフレを抑制するため、なりふり構わず金利を上げている。金利を上げ、景気を冷やすことによってインフレを抑えようというわけです」
今から10年前の2012年、NYダウ平均は1万2000〜3000ドルで推移していた。それが、今年の取引初日では3万5000ドルを上回る最高値。好景気を背景に、10年間で約3倍にも跳ね上がった。
「ところが、高金利政策に舵を切ったことで、上半期末に3万ドル前後まで下がってしまった。ここで止まってくれればまだいいのですが、米政府は今後も金利を大幅に上げていくという方針を明確に打ち出しています。なぜかというと、いまだにインフレが落ち着いておらず、中間選挙までに何とかしないと民主党が負けることになるからです。そうなると、現在の3万ドルの水準には耐えられず、2万5000ドル近辺まで下がる可能性もあると思われます。すなわち『売り』の状態です。『売り』から『買い』に潮目が変わるとすれば、中間選挙の後でしょう。その時点で必要以上に景気が落ち込んでいれば、金利をそのままにしておくわけにはいきません」(佐藤氏)
米国では、コロナ禍におけるステイホームにより、住宅の購買意欲が上昇。21年の米国の住宅価格は過去最高となる前年比18.8%の伸びを記録した。この購買意欲を後押ししたのが、低金利政策だった。住宅ローンを低金利で組めることから、富裕層はもとより、中低所得者層もこぞって住宅を買い求めたのだ。
「住宅ブームで家を購入した人たちは変動金利でローンを組んでいるため、金利が上がると返済に困ります。そうなると住宅不況が始まる。住宅不況が始まると、建築業がダメになり、耐久消費財や家電も売れなくなる。そうなることを避けるため高金利政策を終わらせるようになったら『買い』のチャンスでしょう」(佐藤氏)
つまり、金利引き上げ政策が一段落するまで米国株には手を出さない方が賢明と言えそうだ。
今しばらく待つべきという見方は桐谷広人氏も同様で、
「私の買った株も、ほとんどが下がってしまいました。ただ、為替が大幅な円安に振れたので大きな損害は避けられました。米国は基本的にインフレの国。企業も配当や株価を重視しているので、結果的に投資家への還元も重要視する。その点では、悪い投資対象ではありません。ただ、今の円安基調が続いているうちは買わない方がいいでしょう。私も1ドル=120円くらいに戻るまでは様子を見るつもりです」
もう一つ、ジェイソン氏が強く推奨していたものに、「ドルコスト平均法」がある。これは積み立て預金による蓄財法を株式市場に応用したもので、例えば投資に使える資金が100万円ある人が、それを一度に全額投資するのではなく、5カ月に分けて20万円ずつ分けて買う方法。最初の月に20万円で買った株が翌月半値になったとしても、一気に100万円分購入した時より損失が少なくて済み、残っている80万円で同じ株を安く買い増せるメリットがあるとされている。佐藤氏は、
「相場が右肩上がりの時はいいでしょうが、下がっている時には何の得もない。あまり薦められませんね」
と否定的。一方の桐谷氏は肯定的に見ており、
「初心者にとって、値動きをチェックして購入のタイミングを計るのは難しい。そういう人にとっては、値段のことを考えずに定期的に購入するドルコスト平均法は良い方法です」
いずれにせよ、ジェイソン氏の読者やフォロワーはこの方法で購入していた人が多かったようで、結果として昨年末までは儲け、今年に入って損をしている形だ。うまくいかなかったら誰かのせいにしたいと思うのは人の常だが、投資はあくまで自己責任。余念のない情報収集をお薦めしたい。
*「週刊アサヒ芸能」7月21日号掲載