「これ以上、頑張れとは言えない」
7月5日の巨人戦に敗れた後、東京ヤクルト・高津臣吾監督はそう吐き捨てた。何に対してオカンムリだったかというと、4番・村上宗隆についての質問。同日の村上は2打数無安打、2四球。同日から遡っての直近5試合では、16打数1安打と絶不調なのだ。
「2リーグ制が始まった1950年以降最速となる7月3日でのマジックナンバー点灯は、村上の活躍によるところが大きい。高津監督が『これ以上−』とボヤくのも当然です」(スポーツ紙記者)
しかし、村上の突然の打撃不振にはウラがあった。
6月最後の広島戦だった。同30日、広島先発のアンダーソンと捕手・會沢翼のバッテリーは執拗なインコース攻めで村上を惑わせた。その徹底ぶりを次節のDeNA、巨人が引き継いだのである。
「インコース攻めなんて甘いモンじゃないですよ。村上が根負けし、カウントの途中でベースから少し離れたところに構え直していました」(球界関係者)
相手バッテリーは「ストライクにならなくても」という雰囲気だった。執拗なインコース攻めが始まったその直近5試合で、村上は7つの四球(敬遠申告を含む)を選んでいる。対戦バッテリーは「村上とは勝負しない」の姿勢なのだ。
インコース攻めといえば、こんな情報も聞かれた。広島は東京ヤクルト戦のあと、巨人3連戦を戦い、2勝1敗と勝ち越している。
「巨人・ウォーカーも広島バッテリーのインコース攻めに苦しめられました。広島3連戦前、打率3割9厘、本塁打16と好調だったのに、広島3連戦では12打数1安打。次の東京ヤクルト戦、つまり、高津監督がオカンムリだった5日、ウォーカーも4打数1安打と苦しんでいます」(ベテラン記者)
村上への執拗なインコース攻めは、3位広島のペナントレースを諦めていないという執念とも言えそうだ。2位巨人のウォーカーの今後も心配だが、上位チームのキーマンを潰した広島・會沢は、「恐るべし」だ。
(スポーツライター・飯山満)