飲食店経営者が青ざめる「コロナ協力金」強制回収が始まった!(3)“生かさず殺さず”の額

 さて、思い出してほしいのは、飲食店、特に夜の街に協力金が出たことについての世論の反応である。

 ネットを中心に「協力金バブルで大儲けしている」「〇〇という近所の店はベンツを買った」などという、出所不明の話が数多く出回った。中には、実際そのようなことを行った事業主もいるのかもしれないが‥‥。別の飲食店経営者はこう明かす。

「少なくとも、僕の周りではそんな行動をとった自営業者はいません。世間様がどう思っているのかは知りませんが、個人で店をやる以上、税を含めた利益配分に関してはみな敏感だし、そのための情報は集めてます。もし本当に高級車や遊びで協力金を使ってしまった人がいたとしたら、この春にはみな青ざめたはずですよ。400万〜500万円単位の税金が請求されるわけですから。いったい、どうするのでしょうね」

 準備万端、税金対策を進めていた個人事業主も多かったようで、

「酒代などの経費が計上できなくとも、これを機に店内のメンテナンスを行った人はいると思いますよ。古くなったエアコンや、汚れてしまった壁紙の交換、イスなどの備品の新調。どうせ税金で持っていかれるなら、経費として使って店をよくしようと」(飲食店経営者)

 都内繁華街のスナック経営者も言う。

「お酒やコースターなどの備品を大量買いし、店のグッズまで作って経費にしました。とにかく時間があったから、情報収集として飲み歩いた支払いも接待交際費として100万円ぐらい計上した。その他、ふるさと納税をしたり、ありとあらゆる対策を講じました」

 こんな涙ぐましい努力をしながら、夜の街の住人たちは総じて、第三者からやっかみ交じりの誹謗中傷を浴びせられても現実を直視。「協力金」が決して利益を生むものではないと、早い段階から理解していたのである。

 ところで、これが複数店舗などを経営する事業主の場合はどうだったのだろうか。都内に3店舗を持つ飲食店経営者に聞いてみた。

「うちの場合はもともと法人で、アルバイトは別として、10人弱のスタッフを従業員として雇っている。それだけに、家賃以外に給与など固定の経費は変わらず払っているわけで、個人のお店とは様相が違ってくる。(新型コロナ特例)雇用調整助成金やコロナ持続化給付金などはもちろん、コロナ予防のための店内整備(抗ウイルスなど)補償など、できる限りの申請は全てした。それでもコロナ禍中、2回、私個人の貯蓄を切り崩して店舗を維持しました。従業員の年金負担などもあるわけだしね。はっきり言って儲かっていた店なので、休業要請は本当に厳しかった。もっとも、固定経費がかかったおかげで個人の店ほど課税額が上がるということはなかった。不幸中の幸いと言えばそのくらいかな」

 結論を言えば、国が飲食店などに支払った協力金は生かさず殺さず程度。ちょうどいい塩梅の額と言えたのかもしれない。もっとも、業績がよかった事業者ほどダメージが大きいことに変わりはない。要するに世間が思うほど、国は飲食店に甘くはなかった。事業主たちが愚痴をこぼすのも理解できよう。

*「週刊アサヒ芸能」7月14日号より

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