テスラ株を1兆円分売却!マスク、ツイッター買収に漂う暗雲の根本原因とは

「言論の自由」という崇高な目的を語りながら、周辺の関係者を十分な説明なく振り回しているように見えるのが、イーロン・マスクによるツイッター買収を巡るその後の言動だ。

「マスクが4月25日にツイッター社と440億ドル(約5兆7500億円)で買収することを合意した後、28日に公表されたアメリカ証券取引委員会(SEC)への報告によると、マスクは26と27日の両日に自社のテスラ株40億ドル(約5200億円)相当を売却していたことが判明しました。となれば当然、売られたテスラ株は値を下げるので、マスクは28日に『本日以降の追加売却はない』とテスラ株の保有者を安心させるツイートをしました。ところが29日に明らかになった報告書では、28日にも新たに45億ドル(約5800億円)を売却して、トータルで85億ドル(約1兆1000億円)相当のテスラ株を売却していたことが分かったのです」(経済ジャーナリスト)

 ツイートでは「28日以後」の売却は行わないとあるので、嘘をついたことにはならないが、全ての情報を開示するわけではない。ある種の2枚舌なわけで周囲は不安を覚える。そのせいもあって、25日以前は1000ドルほどだった株価はこのところ、下は850ドルから上は950ドルの間を推移している。

 高まっているのは周囲の不安だけではない。それと同時に、買収に必要なマスクの資金繰りに関しても先行き不透明感が漂う。

「マスクは買収資金として、銀行から130億ドル、テスラ株を担保としたマージンローン(証券担保融資)で125億ドル、自己資金で120億ドルを用意することが可能とし、マージンローンではマスクが保有するテスラ株の20%を担保に入れることになっています。いずれにしてもスキームとしてはテスラ株が相応の価値を持っていることが前提なわけで、予想外にテスラ株が下がるという事態になれば、金額面で担保が不足するという可能性も否定はできません」(同)

 資金面は絵に描いたスキームでスムーズに成功したとしよう。だが、マスクがツイッターを一体どのようにするのか、といった根本的な疑問は常に付きまとっており、やはりこれがテスラとツイッターの周辺関係者をヤキモキさせ続ける原因だろう。

「ツイッターの収益の90%は広告収入です。マスクはツイッターから広告を無くしてサブスクにするとも言っていますが、それで収益は成り立つのか。しかも自由な言論はヘイトスピーチや違法コンテンツを呼び込む可能性があって、EUではこの4月にSNSの違法コンテンツや広告を厳しく規制する法律を成立させたばかり。マスクが言う自由な言論に関しては、永久凍結されたトランプ前大統領のアカウントの取り扱いに注目が集まりますが、復帰を許すのであればあらゆる層の既存ユーザーがツイッターから離れて、一気にツイッターが衰退する可能性もあります」(同)

 やはり最終的にマスクが何がしたいのかは未だ不明で、プーチンのように冷静さを欠くことがなければ良いのだが。

(猫間滋)

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