日米欧が連携して、「プーチン大統領の娘2人に資産凍結の制裁を科す」と発表したのは4月上旬のこと。むろんその理由として、資産移転などの抜け穴を封じる狙いがあることは言うまでもない。
プーチン氏は、旧ソ連の「国家保安委員会(KGB)」職員だった1983年に、客室乗務員のリュドミラさんと結婚。長女のマリヤさん、次女のカテリーナさんを授かったとされるが、3期目となる大統領在任中の2013年に突然、離婚を発表している。
「ロシアメディアによれば、長女マリヤさんは、ロシア国営の天然ガス企業に勤務していたオランダ出身男性と結婚するもほどなく離婚。現在は医師として、モスクワの内分泌研究所に籍を置いているようです。次女カテリーナさんは、サンクトペテルブルク大学で東洋学を専攻。日本語を学び、日本びいきとして知られています。プーチンの盟友の息子で、ロシアの大手石油化学企業の大株主でもある富豪と結ばれますが、こちらも姉同様、結婚生活は長くは続かず離婚したと伝えられています」(ロシアの事情に詳しいジャーナリスト)
かつてのインタビューでは「娘は政治やビジネスとは別世界で生きている」と語っていたプーチン氏だが、米政府はマリヤさんを「ロシア政府が支援する遺伝子研究のリーダー」と位置づけ、カテリーナさんについても「国防事業などを支えるハイテク企業の幹部」と判断。つまり、2人の娘は「別世界」にいるのではなく、「現政権」との強固なパイプを維持しており、それが今回の資産凍結という措置に繋がったとしている。
ところがそんな中、制裁対象になるのは間違いないと目されていた“大統領と事実婚状態”にあるとされるアリーナ・カバエワ氏が制裁対象から外れたと4月24日付の米紙『ウォールストリート・ジャーナル』が伝え、波紋が広がっている。
「カバエワさんはアテネ五輪新体操女子の金メダリストで、プーチン大統領との間に、少なくとも3人の子供がいるとされています。08年に現役引退後にはロシア下院選挙に出馬し当選。14年開催のソチ五輪広報責任者や、メディアのトップである『国家報道グループ』の総帥を務め、現在はスイスで子供たちと暮らしていると言われています」(同)
同紙によれば、カバエワ氏には以前から海外への資産隠しの疑いがあり、米政府は制裁措置の準備を進めていたが、米国家安全保障会議にて「米ロ間の緊張を高める可能性があり、攻撃的な方法で反撃される恐れがある」と判断され、制裁対象から外されたようだ。
「カバエワ氏には男児がいて、この子がプーチン氏の息子なら後継者となる存在。仮にカバエワ氏を制裁対象にして家族の生活が困窮した場合、怒り狂ったプーチン氏が過剰反応することはあり得ない話ではない。米国としてはそれだけは何としても避けたかったのでしょうが、結局またプーチンに舐められたことは間違いないでしょうね」(同)
独裁体制にますます拍車がかかりそうだ。
(灯倫太郎)