あのツイッターでのお騒がせ男、テスラやスペースX社CEOのイーロン・マスク氏が、今度はツイッターの経営する側に回ることに。
「4日には株式の大量保有をした場合の届け出でマスクがツイッター社の株式を9.2%取得していたことが明らかになり、周囲は色めき立ちました。この1週間前にマスクは、より自由な言論の場が必要だとして新しいSNSの創設を本気で検討しているとツイートしたばかり。そんなタイミングでしたから、新しいSNSを立ち上げる前にツイッター社を買収してしまえという動きに見えたのでしょう。一時は27%も株価が上昇しました」(経済ジャーナリスト)
ただこの段階では、会社への影響力や支配権変更を行使する目的でない「受動的」な株式取得の「13G」の届け出だった。ところがこれを受けてツイッター社CEOのパラグ・アグラワル氏がツイッター上でマスクの取締役就任を提案。するとマスクはこれを快諾し、「今後数カ月で著しい改善を遂げることができるよう楽しみにしている」と応じたのだ。
と、一見すると光速の取締役就任劇に見えるのだが、既に舞台は作られていたとの観測もある。
「まずマスクがツイッター社株の取得に動いたのが1月31日からで、そこから4月1日にかけてほぼ毎日、現金で買い増していたといいます。そして一説によれば、3月にマスクはツイッターの共同創業者のジャック・ドーシーとアグラワルに接触して、経営に参画したい旨を伝え、両者はこれに合意したとのこと。こうした一連の動きを考えれば、マスクは株式を取得しつつアグラワルとも交渉して、新SNSの創設というフェイク・ニュースで人々の目を逸らしながら、全て計画的に物事を進めていたと考えることも可能です」(同)
4日にツイッター社が株価を上げた際も、報告書をキチンと読めば「13G」なので単なる「純粋投資」ということになるが、5日には詳細な情報公開を行い、経営により積極的に関わる「13D」に変更している。しかもマスク氏とツイッター社の間では、マスク氏が取締役を務める間は普通株の保有で14.9%以上に引き上げることができなくなっているというのだから、ツイッター社としてはマスク氏の新SNS創設や買収工作を封じたことにもなる。マスク氏としてはツイッター社の経営に入り込め、ツイッター社としては外部の虎を身内に引き込んだわけで、両者はまさにウィンウィン。やはりかなり計画的だったように思えるのだ。
さらに株式の大量保有が判明した4日には、マスク氏はツイッター上で「ツイートを行った後に投稿内容を編集できるボタンが欲しいかどうか」について、アンケート投票を求めるツイートを行っていた。そしてこれについても、ツイッター社は5日にすぐさま投稿内容を編集できる機能の実証実験を開始すると明らかにしている。しかも、ボタン追加については既に昨年末からそうした作業を行っていたと言っているのだから、結果的にはマスク氏と“出来レース”をしていたことになる。ドーシー氏が昨年11月にCEOを退任した際、マスク氏はツイッター株取得の意向を示していた。
そのマスク氏、5日に発表されたフォーブスの「世界長者番付」で、推定試算27兆円で初の首位となった。日本のネットでは、マスク氏があまりにツイッターにのめり込む「ツイ廃」(過度のSNS依存を示すネットスラング)ぶりから、「ついには大株主にまで」などと揶揄されている。世界一の資産をバックに、EV・宇宙・SNSのコングロマリットでも目指しているのだろうか。
(猫間滋)