「手術後は再発と転移の予防のために、また抗ガン剤治療を4クールの予定で再開しました。でも副作用が前よりひどく、こういう言い方もおかしいけど『人生やめますか、抗ガン剤やめますか』ぐらいまで追い詰められていた。精神的にもおかしくなって、ステージに立つことが支えだったのに『復帰なんて絶対できない』って悲観的に‥‥。医者に相談したら、抗ガン剤治療を最後までやっても絶対再発しないとは言えない、逆に途中でやめたから再発するとも限らない、というのが答えでした。家族は『続けてほしい』と言うけど、最終的には悩みに悩んで、自分で中断することを決めたのです。
その代わり、生活をガラッと変えようと。薬をやめた以上は、自分でなんとかするしかないわけだから、本を読んだり、ガン体験者からアドバイスをもらったりして、それらを考え合わせると、生活習慣を変えて免疫力を上げるしかない。俺の体の中をガン細胞がぐるぐる回っているかもしれないけど、これ以上は大きくさせない。いや、なんならガンを消してしまえという結論に至りました。
30〜40代の俺は大酒飲みだし、タバコも吸うし、絵に描いたような暴飲暴食を繰り返していた。睡眠は3時間で、夜中まで酒を飲んで、ラーメン食って、起きたらカレーライスを食うみたいな生活でね。タバコは5年ぐらい前にやめていたけど、当然ながら酒も一切飲まないようにして、食事も免疫力を高める食材を中心にしました。例えば、以前なら信じられないけど、スムージーを作って飲んでいます」
バナナとショウガ、ゴーヤを基本に、日によってベランダで栽培しているベビーリーフなどを入れ、牛乳、ハチミツを加えてミキサーにかける。果物が大嫌いで、バナナなどほとんど食べなかったというが、「意外なことに、これがおいしいんですよ」と桑野は笑う。米の代わりにキャベツを食べてみたり、おかずも肉より魚を中心にして、時々は絶食して胃腸を休ませているという。
「今では『オッサンのモーニングルーティン』というのができあがっちゃった。本当は1日8時間寝たいんだけど、夜9時に寝るとどうしても朝4時には起きてしまう。まずはベランダに出て、数回深呼吸をする。朝の新鮮な空気を体に入れるわけです。そのままベランダでひとりエッチ‥‥ではなくてストレッチ(笑)。部屋に戻って白湯をコップに1杯飲んで、黒酢と酵素ドリンクを合わせてお湯で割ったものを、小さめのコップに1杯。最後に黒ニンニクを食べる。ニンニクは『デザインフーズピラミッド』(90年にアメリカの国立がん研究所が発表したガンにならないために効果的な食品群)の頂点にあるから、今も欠かさず食べています。
結果的に、俺の場合は抗ガン剤治療を中断して良かったと思っています。4月のツアー初日には間に合わなかったけど、7月7日のステージで復帰が叶いましたから。もし抗ガン剤を続けていたら、復活は今年になっていただろうし、そうなると紅白にも出場できなかったわけだから」
桑野信義(くわの・のぶよし)1957年生まれ。80年に「シャネルズ」のトランペッターとしてデビュー。その傍らで数多くのバラエティー番組に出演するなど、コメディアンとしての一面も持つ。昨年3月に大腸ガンの手術を受けたことを公表。その4カ月後に芸能活動を再開し、昨年末の紅白歌合戦で見事な演奏を披露した。
*桑野信義「大腸ガン」からの生還を語り尽くした【4】につづく