岸田政権の目玉「デジタル構想」は“金ナシ人ナシ”の絵に描いた餅か

 昨年9月1日の菅政権時代にデジタル庁が発足し、岸田政権になってからもデジタルと名の付く会議を2つ創設。その会議の1つで地方活性化の切り札と言われる「デジタル田園都市国家構想実現会議」が、年末の12月28日に施策の全体像をまとめた。それによれば、令和8年までに地方のデジタル人材を230万人育成との目標が定められた。このように行政のデジタル化は焦眉の急として推進の掛け声はだけはやたら大きいが、果たしてそんなにスムーズに実現するものなのか、各所から疑問の声が上がっている。

「今年に入って早々、大阪府がデジタル化業務の民営化を検討しているとの報道がありました。IT大手やベンチャーからなる10社ほどの企業と共同出資して新会社を立ち上げ、デジタルスキルのある出資企業の社員を出向で受け入れて、システムの運用や開発等を一元化。行政に不足していると言われるデジタルスキルを補いつつ蓄積しようというものです」(経済ジャーナリスト)

「身を切る改革」を旗印とし、、行政のコストカットで民営化できるものは民営化したがる“維新政権”下の大阪が検討しているこの案は、「民間活力の活用」と言えば聞こえは良いが、要は、今の地方自治体レベルでは自前のデジタル化は不可能という現実を示しているとも言える。なぜなら金がなければ人もいないからだ。
 
 昨年10月に総務省が行った都道府県アンケートによると、地方のDX化の課題として「財源の確保」が95.7%、「人材の確保」が44.7%を占めた。つまりはほぼ100%の自治体で金がないというのだ。では半数が課題とした「人材の確保」についてさらに見れば、「みつけられない」が83%、「適切な報酬が支払えない」が66%だった。金がない上に人もいない。いたとしても金は無いのだから雇えるわけもないだろう。結局はずっと同じことを言っているわけで、ないない尽くしの悪循環であることが分かる。

「先に国でスタートしたデジタル庁では、職員600人のうち200人が民間からという、霞が関の旧弊を破った異例の組織構成ということで注目されました。ところが中身を見ると、採用条件が週3日・非常勤職員という中途半端な上に非正規雇用という急ごしらえかつ上から目線の条件で、そんなことでまともな人材が集まるわけがないと言われました。経産省の試算でも、放っておいても令和12年にはIT人材が79万人不足すると言われる中、ポジションによっては年収1000万円を超える優秀なIT人材は民間で奪い合いの状態なわけで、現状のままではどうやって地方で230万人もの人材を確保するのか不明ですね」

 言うまでもなく、デジタル化は岸田政権の目玉政策の1つ。絵に描いた餅で終わらなければ良いのだが。

(猫間滋)

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